音楽家長渕剛(55)が、東日本大震災から1年の11日に、東北の被災地から生放送されるテレビ朝日系「報道STATIONスペシャル

 愛おしきあなたへ」(午後9時)に出演する。長渕は2月下旬、同番組の取材で福島第1原発から20キロ圏内の福島県浪江町や相馬市、岩手県の釜石市や陸前高田市を訪れた。その模様も放送される。

 浪江町では、放射能の防護服を着用し、線量計を携帯して取材した。長渕は「怖かった。日本もこんなことをしなければ入れなくなってしまったのか」と思ったという。赤信号が点滅する無音の町内では、時間の止まった世界を目の当たりにした。「体温とか命の音とか、さっきまであったであろう音がまったくなかった」。野良牛化した乳牛が人恋しさか、寄って来た。長渕は「いつか薬殺される運命に、誰がその目を直視できるのか」と声を震わせた。

 相馬市では、自殺した牧畜業の経営者が壁に「原発はないほうがいい」と書き残した“遺書”の前で立ちつくしたという。「(放射能のため)乳を搾っては捨て、捨てては搾っていたことを、おまえたちは知っているのか、という痛切なメッセージ。突きつけられた思いだった。日本という国に裏切られた気持ちがした」。長渕の口調は怒りにも似た強さがあった。

 番組では、新曲「愛おしき死者たちよ」を披露する。♪よみがえれ

 愛しき

 死者たちよ!

 100年かけても眠るんじゃないぞ!!

 無言の痛みと

 無念の怒りたちで

 貧弱な

 俺たちの胸を叩き続けてくれ…

 長渕は「本当の怒りを突きつけられた人間は押し黙る。それが怒りだ。浪江町も押し黙っていた。シャウトせず、その思いを伝えたい」と語る。今後、反原発の曲も制作する予定という。