「愛のコリーダ」「戦場のメリークリスマス」などで知られる映画監督の大島渚さんが15日午後3時25分、肺炎のため、神奈川県藤沢市内の病院で死去した。80歳だった。

 映画でタブーに挑戦し続けた大島監督は、テレビなどでもその強烈な反骨精神を見せつけた。

 87年4月に始まったテレビ朝日系討論番組「朝まで生テレビ」では、小田実氏、竹村健一氏らとパネリストとして活躍。政治経済だけでなく、日韓関係やオウム真理教などさまざまなテーマの討論会に出演し、佳境に飛び出す「バカヤロー!」の怒鳴り声は、番組の定番として話題になった。一部で「視聴者が眠くなったころを見計らって怒鳴る」といううわさまで広がるほどおなじみだった。

 90年10月の大島監督夫妻の結婚30周年を祝うパーティーでは、友人で作家の野坂昭如氏と大立ち回りを演じた。祝辞を読んでもらうはずだった野坂氏のあいさつを大島監督が忘れたことから、野坂氏が殴りかかった。大島監督はマイクで頭をポカポカ殴り返した。「失礼はしたけど、殴ることはないだろう」と憤然と話した。

 96年9月にテレビ朝日系「新やじうまワイド」の放送後に出血性脳梗塞からの復帰会見を行ったが、直後の生放送番組の時間まで会見を引き延ばそうとした女性リポーターに「お行儀が悪いんじゃない。はっきり言うけど、そういうことはやめろよ!」と一喝したこともあった。

 芳香剤、魚焼き器などテレビCMにも積極的に出演した。殺虫剤のCM出演の際「幼児化の時代風潮の中で、名誉もあり立派だと思われる方に“ガキ”役をやってほしい」と依頼されると「面白い」と快諾。撮影が終わっても「もっとやろうよ!」と大乗りだったという。これも大島監督の“素顔”だった。