東京都の舛添要一都知事に政治資金公私混同問題が浮上して、間もなく1カ月が経過しようとしている。しかし、収束の気配はない。ちゃんと納得できる説明がないからだ。テレビの論客で鳴らした国際政治学者時代や、参院議員時代を含めて、舛添氏は、自身の発信力を1つの「武器」に、ここまで来たように感じるので、これまでの説明姿勢は、正直、意外だった。

 先月13日、お金の問題について初めて定例会見で話した時は、堂々巡りの部分はあったが、疑惑を払いのけようと何らか説明をしようという姿は垣間見えた。結果的に、それがあだとなり、さらに疑惑を深める部分もあるが、その会見以降は、「第三者による厳しい調査」を盾に、まともな質疑がほとんど成立しなくなってしまった。

 政治とカネの問題を抱えた政治家にとって、記者会見は、問題の真相に迫りたいメディアとの「対決」の場でもある。そこで、「第三者の調査」を繰り返してまともな答えを返せない。舛添氏は、自分の最大の強みでもある「発信」を放棄した。それが、今の舛添氏のリアルな姿だ。

 今から約3年前、2013年夏の参院選に出馬せず、国会議員の仕事から身を引こうとしていた舛添氏に、インタビューした。自民党を飛び出して結成した新党改革の代表として臨んだが、党勢拡大できずに敗北。「私はもうすぐ失業者になるが、筋は通しておいた方がいいと思った。いったん、けじめをつける。いちばん、重い責任の取り方をした」と話していた。「筋を通す」「責任を取る」。3年前には、こんな言葉も口にしていたのだ。

 こんなことも言っていた。現在の選挙制度はお金がかかりすぎると口にしながらも、「お金がなくても政治を志したい人には、お金を出してあげないといけない。(参院選で、党代表として立候補者に)公認料を出したので、借金ばかりがたまってしまったが(笑い)、それが当たり前だと思う」と、意地をのぞかせた。

 国会議員の心構えにも、話は及んだ。「当選して議員になっても、給料をもらうのが、ほとんどの人の目的になっている。何があっても、議員辞職までやって、党を移る人もいる。そういうのは筋が通らない」と、言っていた。

 今、問題になっている政治資金の公私混同の多くは、この議員時代からすでに始まっていた。舛添氏の過去の発言は、実際の言動との落差をあぶり出す、貴重な「証拠資料」になっているように感じる。