★今、防衛省はうねりの中にいる。自衛隊の陸幕、海幕、空幕は複雑だ。隊内には一部の幹部とそれに感化された中堅の精鋭の中に旧軍への憧憬(しょうけい)が見られるとともに、ミーティングや合同演習などで連携し、共同計画など共にオペレーションに関わった米軍というより“真の軍隊”への強い関心というか、あるべき姿への思いがぬぐえぬ者がいる。一緒にやっていればそういう気持ちになるのも理解できると思うかもしれないが、戦後の自衛隊の存立基盤が旧軍や他国の軍隊と違うことはたたき込まれているはずなのに払拭(ふっしょく)できない。
★映画「皇帝のいない八月」は自衛隊のクーデターの架空の話だが、1992年、週刊誌に自衛隊クーデター容認論を発表した陸上自衛隊高射学校の戦史教官・3佐・柳内伸作は懲戒免職になった。18年、午後9時過ぎ、国会議事堂周辺、参院議員会館を出たところの公道で、防衛省統幕指揮通信システム部の3等空佐が突然声をかけ、民進党参議院議員・小西洋之に「お前は国民の敵だ」「お前の国会の活動は気持ち悪い」と罵倒した。職務質問を行う複数の警察官が集まって来たが、そこでも「お前は国民の敵だ」というような発言を繰り返したという。これもシビリアンコントロール(文民統制)を無視した現代のクーデター未遂と言える。
★だが、24年1月8日、陸上自衛隊東部方面総監・冨樫勇一、教育訓練研究本部長・広恵次郎、陸上幕僚監部監理部長・岸良知樹らが制服のまま公用車で靖国神社に参拝、敷地内にある旧陸軍将校と元陸自幹部らでつくる公益財団法人「偕行社」の賀詞交歓会に出席、9日には陸上幕僚監部ナンバー2の幕僚副長・小林弘樹ら22人が時間休を取って靖国神社を参拝しており、宗教施設への「部隊参拝を厳に慎む」に抵触した。のちに訓戒、注意の処分を受けた。昨年末、防衛省出身の首相補佐官がオフレコで「日本は核保有すべきだ」と発言、そしてこれから自衛隊法改正で旧軍の階級呼称の復活と、多くの隊員たちが国民に親しまれる自衛隊を目指している中、執拗(しつよう)に後押しする政治家らと連動してほとんどとがめられていない。自民党内にも応援団もいるし、最近の一連の動きを不祥事として防衛相・小泉進次郎のぬるい対応を苦々しく思っている向きも少なからずいる。自衛隊は重大な岐路にいる。(K)※敬称略


