昨年の東京都知事選に続き、小池百合子都知事(64)と自民党都連が分裂&激突する千代田区長選は29日、告示された。小池氏と「都議会のドン」内田茂氏(77)がそれぞれ支援する現職と新人が、事実上の一騎打ち。内田氏は表舞台に出ず、陣営も内田色を封印し「代理戦争」を薄めるが、小池氏は対照的に最前線で、「ぶっちぎりで勝たせてほしい」と訴えた。内田氏の今後や7月の都議選、ひいては国政にも影響しかねず、国政選挙並みの注目度だ。2月5日投開票。

 「東京大改革を進めるため、1つ1つの戦いを勝ち抜いていきたい。負けるようなことがあれば後退する。ぶっちぎりで勝たせてほしい」。小池氏は29日夕、伊豆大島視察からとんぼ返りしてJR有楽町駅前に赴き、石川雅己氏(75)の横で勝利への思いをむきだしにした。

 表舞台に立つのは、打倒ドンに向けた「代理戦争」を意識した行動にほかならない。5選を目指す石川氏は、16年前に初めて区長選に出馬した際に使った百合子カラーの緑のマフラーを手に、「初心に立ち返る。知事と二人三脚でやっていく」と、連携を強調した。

 千代田区は、75年の区議初当選以来、40年以上の内田氏の地盤。石川区政を内田氏が支えた時期もあったが、2人には次第に溝が生まれた。内田氏は前回、石川氏を副区長として支えた人物を対抗馬に擁立し、1264票差で敗れた。今回は、意中の人物が次々に辞退。候補者選びは難航、結果的に、地元で知名度が高い「与謝野ブランド」にすがる形になった。与謝野信氏(41)の擁立を決めた後、内田氏は周囲に「頼みますよ」と、支援を要請したという。

 その内田氏は、戦いの最前線に立つ小池氏と対照的に、表舞台から姿を消した。都知事選の対決構図を嫌う与謝野氏の意向で、陣営も「ドン隠し」を徹底。内田氏に近い都連幹部も、神事の前に事務所を後にした。与謝野氏は、「代理戦争なんていらない。そんな汚いものは(選挙に)持ち込まない」と、訴えた。

 ただ、出陣式では「区長は都知事ではなく、区民が決める」「行政の長が、いちいち区長選に首を突っ込んでいいのか」と小池氏批判も飛び、対決モードは隠せない。

 石原伸晃経済再生担当相や丸川珠代五輪相が応援に入り、丸川氏は「改革が必要な時に『与謝野』の名を背負って立つのは、時の運ではないか」と後押しした。「こんな長い区政は打倒せよ」という、おじ与謝野馨氏の祝電まで紹介された。【中山知子】