今春、鉄道会社が続々と新型車両を投入している。東武鉄道はこのほど、26年ぶりの新型特急となる「リバティ」の営業運転を始めた。3両ずつの車両を連結させた6両編成で、観光や通勤など目的によって幅広く利用できる。すでに走り始めた西武鉄道「Sトレイン」、来月1日にJR東日本が投入するクルーズトレイン「四季島」など、新たな車両が鉄道の楽しみを広げてくれる。

 朝6時30分発の「リバティ」1番列車が、始発の東武浅草駅からゆっくり動きだした。同じ東武の6両編成でも、固定された特急「スペーシア」(日光・鬼怒川方面行き)「りょうもう」(館林方面行き)と違い、3両ずつに切り離しができる。全席指定(特急料金は東武線内510円から)。

 今回初めて会津鉄道の会津田島まで乗り入れるほか、春日部からアーバンパークラインで大宮、運河(千葉県流山市)方面にも乗り入れる。東武動物公園で、館林と東武日光に分かれる電車もある。「本線では連結させますが、枝分かれする路線で分割することで、機動力が発揮できる。これが大きな特徴」と東武鉄道の広報担当は説明した。

 電車名のリバティは、英語で自由の意味のリバティーと、多様性を意味するバラエティーを掛け合わせた。どこへでも、どんな用途にも、自由自在に組み合わせることができる。

 通勤特急の「スカイツリーライナー」や「アーバンパークライナー」(特急料金310円から)として、混雑時にも走らせる。全席コンセント装備は、他社ではお目にかかれないと思われるサービスだ。朝晩、着席して通いたい人は、特急料金を支払えば、楽に通勤できる。

 観光地への直行も可能になった。日光や鬼怒川温泉に行く場合、同じスペーシアでも、「きぬ」なら鬼怒川温泉・新藤原、「けごん」は東武日光と行き先が限られる。分岐する下今市で、待ち合わせの一般車両に乗り換えなければならなかった。「初めて訪れる人、荷物の多い人にとって大変な乗り換えの手間が、リバティなら省けます。日本を代表する観光地である日光や鬼怒川温泉だけではなく、会津まで足を延ばせる。観光客を誘致するいい武器になる」(東武広報)。

 かつて鉄道会社は、ベッドタウンの人口増に対応すべく、輸送力アップを競っていた。今や運輸業というより、サービス業として移動の質を競う時代。「東武にしかできないコンテンツで、沿線の魅力をPRしていく」という方針だ。

 2012年5月に開業した東京スカイツリーは、まだまだ多くの人が訪れる。今年3月には日光東照宮の陽明門が改装された。観光の話題に事欠かない東武鉄道で、リバティが多種多様な旅路を彩る。【赤塚辰浩】