中日の開幕投手が大野雄大投手(28)に決まった。3年連続2桁勝利の実績があり、昨年は7勝ながら勝ち頭。能力や立場でいえば順当。しかし、決定までの流れを見ていると一抹の不安を覚えた。

 果たして9月、10月まで心と体がもつのだろうか。大野は「つかみ取ったと思っている」と話した。実際、オープン戦の結果が悪ければ微妙だった。大野はもともと、開幕投手に値する信頼を得られていないと思っていたという。立候補した本人からすれば、3月中旬にかけて本気の勝負をしていたことになる。

 昨年も開幕投手を務めたが、すぐに左肘痛を訴え2カ月離脱した。復帰後も本調子の時期は短く、夏場以降の低迷はチームの下降曲線ときれいに重なった。本来、誰よりも完投能力があり、ここぞでの馬力もある。中日の戦力を見わたせば「コケたら困る」投手の筆頭だ。長いシーズンに備え、3月は万全の準備期間とさせたいのが本音だろう。肘痛が再発しない保証はもちろんない。

 それでも首脳陣は今年も大野を試した。大黒柱としての自覚を高めてほしい、有言実行する姿を見せてほしい、精神的にタフになってほしい…。期待が大きいゆえの親心は痛いほど分かる。勝ち取ったものだけが仕事を与えられるという原理も分かる。

 「開幕」のとらえ方も関わってくる問題だ。143分の1なのか、何らかのメッセージを込めた特別な試合としたいのか。理想と現実の折り合いは常にチームの難題として横たわる。大野とチームがどう1年間戦っていくのか注視したい。【中日担当=柏原誠】