球団史上初めて新人が開幕戦の白星を決めた。DeNAのドラフト3位、柴田竜拓内野手(22)がプロ初打席で初安打&初打点をマーク。2回1死二、三塁の絶好機で広島ジョンソンの直球を捉え、決勝の2点適時打を放った。先発井納翔一投手(29)も7回3安打無失点の好投で03年の吉見以来、13年ぶりとなる開幕戦の先発白星。今季から指揮を執るアレックス・ラミレス監督(41)に開幕戦のウイニングボールをプレゼントした。

 最高潮の興奮の中に自然体があった。柴田がプロ初打席に向かった。2回1死二、三塁の絶好機。広島ジョンソンの初球だった。145キロの直球に素直にバットを出した。シャープに振り抜いた打球は、二遊間を破り中前で弾んだ。「前の打者がつくってくれたチャンスだったので、受け身にならずにと。初球が一番、甘くくると思って積極的にいった」。自身のメモリアル打は値千金の決勝2点適時打。ラミレス監督の初陣を白星に導いた。

 三塁ベース上からの視線が柴田を正気に保たせた。塁上には主砲でキャプテンの筒香がいた。宜野湾キャンプ中は夕食後に筒香の部屋で連日“特訓”を敢行した。「ゴウさんの部屋で素振りを見てもらっていた。いろいろと意見をもらいながら2人でやっていたら夢中になりすぎて深夜になることもありました」。この日の打席も少し距離は離れていたが、構えるバットの先には筒香の姿があった。

 野球がうまくなりたい一心で食らいついてきた。「自分は1日1日が勝負。今までやってきたことも大事ですが、いろいろな意見を取り入れて勉強していかないと、この先はない」と探求心を忘れたことはない。だから、時計の針がてっぺんを越えても無我夢中にバットを振り続けた。晴れ舞台で結果として成果が表れた。「今までは引っ張ることばかりだった。ただ、気持ちよく打っていても結果は出ない。多少、窮屈でもコースなりの打球を意識してやってきた」。プロの初戦で証明してみせた。

 ラミレス監督も手放しで褒めたたえた。「期待した以上の働きをしてくれた。これまで積み上げてきたことを試合で出してくれた」。チームは3年ぶりの白星発進。記念球を大事そうに左手で握りしめた指揮官は「特別な気持ち。本当に夢がかなった。新しい歴史をつくることができた」。ルーキーから新監督にホットなプレゼントが届いた。【為田聡史】

 ▼ルーキー柴田が先制の2点適時打を放ってDeNAが開幕戦に勝利。開幕戦で新人のV打は97年小坂(ロッテ)以来で、ドラフト制後は4人目。セ・リーグでは59年に江藤(中日)と赤木(国鉄)が記録して以来、57年ぶりとなり、DeNAでは初めて。DeNAの得点は柴田の適時打による2点だけ。チームの全得点をたたき出して勝利に導いた新人はプロ野球史上初めてになる。