ヤクルト山田哲人内野手(23)が、2戦連発となるリーグトップタイ11号2ランを放った。昨季の同時期は、わずか2本塁打のスロースターターだったが、今季は打率、打点、盗塁も含めた全成績で昨年を上回っている。他球団からのマークが厳しくなる中、結果を出し続ける23歳。妥協しないメンタルと磨き上げた肉体が礎となり、史上初の「50発でトリプルスリー」も夢じゃない!?

 どこまで進化するのだろう。4点リードの5回2死二塁。山田が初球から勝負に出た。真ん中高め140キロ直球は、瞬く間に左中間席中段へ。第1、第2打席は直球に詰まった。「慎重にならないように。思い切りのいいスイングだけを心掛けた」と、失敗を持ち越さなかった。早くもリーグトップタイの11号。ダイヤモンドを1周する姿が、日常となりつつある。

 山田の真面目さが、パフォーマンスの維持につながっている。昨季トリプルスリーを達成してスターの仲間入りを果たしたが、日々不安に襲われるという。それを打ち消してくれるのが「ルーティン」だ。今年も、試合前に杉村打撃コーチと10種類のティー打撃を行う早出特打は1日も欠かさない。「臆病なんでね。急にうまくなんてならないし。地道にやっていかないといけないので」。輝かしい成績の裏に、基本の反復がある。

 昨季、ともにトリプルスリーを達成したソフトバンク柳田は、徹底マークを受けて苦しんでいる。もちろん山田も同じ。四球はリーグトップの25と警戒されている。それでもプロの厳しさを知ればこそ、どんな困難にも立ち向かう覚悟がある。

 「高校まではイケイケ。プロに入ってもそういう気持ちがあった」と振り返る。

 一変したのは、14年5月28日の日本ハム戦だった。大谷から3安打を放ち、最後は153キロ直球を打ち返した。だが、「次の打者のバレンティンには158キロを投げていた。僕とは勝負してもらえていなかった」と、もう一段高いプロのレベルを目の当たりにした。だから「去年活躍したことも過去の話」と言い切れる。さらなる高みを目指し、決して満足はしない。

 パワーアップした体も手に入れた。昨季はプロ初の全試合出場を果たしたが、「体力面で力不足だった」と痛感した。開幕時は75キロあった体重が、夏場に71キロまで落ち込んだ。今年はキャンプ中から精力的にウエートトレーニングに取り組み、ダンベルやベンチプレスなど主に上半身の筋力を強化。体重も一気に78キロまで増え、背筋も発達して背中には“羽”が生えた。

 気持ちも体も充実し、このままのペースなら50本塁打でのトリプルスリー達成も現実味を帯びてくる。どこまで歩みを進めるのか。ゴールは見えない。【栗田尚樹】