【第63回】
生活技術、進路を一緒に考える
注意欠陥多動性障害
「落ち着きがなく集団になじめない」「特定の学力が極端に低い」といった子どもの教育の問題が、学校現場で表面化している。このような子どもたちに注意欠陥多動性障害(ADHD)学習障害(LD)アスペルガー症候群(AS)と呼ばれる軽度の発達障害がある場合が多いことは、ここ数年知られてきた。このような子どもたちに対し、文部科学省は今年度から「特別支援教育」を全国の1割の小中学校でスタートさせた。支援の対象となる子どもたちは、現在の障害児の5倍になる見通しだ。
「ADHDの人は、集中できない、時間を守れない、人の話を聞けない、物事を計画通りに進められないといった傾向があるので、性格的にだらしがないと考えられがちですが、そうではなく、脳の情報処理に障害があると考えた方が合理的です」と説明するのは、ADHDの当事者で、当事者グループ「WingBrein(翼ある脳)委員会」のロクスケ氏だ。「障害だからこそ、それを克服する具体的なリハビリのシステムが必要なのです」と話す。
日本では、ADHDについて診断をする児童精神科医は不足している。専門的なトレーニングをするコーチやカウンセラーも非常に少ないのが現状だ。ロクスケ氏は「診断名をつけることより、むしろ具体的な生活技術を教えることの方が現実的」と指摘する。薬物療法には、多動などの症状を抑える一時的な効果はあるが、ADHDそのものを治療する方法ではないからだ。
ADHDの傾向を持つ子どもにとって、自分の衝動性を抑え、社会と適応することを求められる思春期は大変な時期だ。自分の不注意で他人に迷惑をかけ、自信のなさから失敗を繰り返し、自己評価が下がってうつ状態になるなど、2次障害が起きることが多い。障害による生きづらさを抱えているという原因は見逃され、うつ病と診断されたり、不登校となるケースもある。「思春期は親との話し合いが難しい時代ですが、まず親や教師が、子どもを受け入れてその存在を肯定してください。障害という特性を理解した上で、生活技術や進路や職業選択などを一緒に考えてあげてほしい」とロクスケ氏は強調する。
【ジャーナリスト 月崎時央】
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