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「記録の男」から「記憶に残る監督」へ 王貞治 王 貞治(福岡ダイエーホークス)
1977年9月4日付 紙面
1977年9月4日付
王 感動の世界新 756号
 王は世界の最高峰に立った!巨人王貞治選手(37)は三日後楽園で行われた対ヤクルト二十三回戦で、三回裏鈴木康二郎投手から右翼スタンド百十メートル地点に世紀のアーチをたたき込み、ハンク・アーロンを抜いて通算756号のホームラン世界記録を達成した。ときに午後七時十分七秒。王選手はバンザイを二度繰り返してベースを一周。祝福の花束を受けてスタンドの万雷の歓呼にこたえた。
(日刊スポーツ1977年9月4日付)

 「記録は破られるためにある」。これは古今東西、スポーツの世界で語り継がれてきた格言です。しかし「不滅」と呼ばれる記録が存在することも事実です。日本のプロ野球界では、王貞治がマークした868本のホームラン記録ではないでしょうか。
 この記録は日本球界ばかりではなく、メジャーリーグを含め「世界一」。巨人でプレーした1959年から1980年までの22年間で積み上げた記録です。
 日本でホームラン記録を追う現役トップは巨人清原の480本。メジャーリーグでは、ジャイアンツのバリー・ボンズで658本。今年で37歳になる清原。40歳になるボンズ。両選手の年令を考えれば、王の記録を追い抜くのは、至難なことです。
記録の男-3冠王2回、ホームラン王15回

 王の偉大な記録は他にもあります。3冠王2回、ホームラン王15回、打点王13回、首位打者5回。「記録の男」にふさわしい、輝かしい実績です。
 こんな「記録の男」も監督に就任してからは、いばらの道。1984年、巨人の監督に就任したものの5年間で、優勝は87年の1度だけ。しかも、日本シリーズでは、西武に敗れ、翌年には解任されました。
 1995年、ダイエーの監督に就任しましたが、1年目5位、2年目最下位。ファンから生卵をぶつけられる屈辱も味わいました。「名選手必ずしも名監督たり得ず」との批判も飛び出しました。
 どん底に突き落とされた「記録の男」が栄光を取り戻したのは、発想の転換でした。巨人時代、ハンク・アーロン(ブレーブス)の持っていた世界記録755本のホームラン記録を更新した年、私は王番記者をしていました。
最後の本塁打となった通算868号本塁打を放つ王貞治
最後の本塁打となった通算868号本塁打を放つ王貞治=1980年10月12日後楽園球場
 以来、人間・王貞治を見続けてきました。ダイエー監督として初優勝。日本一になった1999年。王監督は、私にこんなことを打ち明けました。「巨人の監督時代は、全試合勝とうと思ってさい配をふるった。信じられないかもしれないが、それほど勝つことにこだわっていた」。
常勝軍団へ-失敗を覚悟し長所を伸ばす

日本シリーズを制し、日本一の胴上げに舞うダイエー・王貞治監督
日本シリーズを制し、日本一の胴上げに舞うダイエー・王貞治監督=2003年10月27日福岡ドーム(写真=宮崎幸一)
 勝つことにこだわれば、どうしても、実績や名前のある選手に頼ることになります。その結果、若手選手を育てることはおろそかになります。失敗を覚悟し、長い目で選手を使い続ける余裕はなかったのです。
 しかし、ダイエーで最下位まで落ちたとき、王監督は、思い切って若い選手を使い時間をかけて、手造りでチームを再建する方針に切り替えました。以来、99年から優勝3回(日本一2回)2位2回。今や、ダイエーはパの常勝軍団へと姿を変えつつあります。
 野手では、松中、城島、井口、柴原に川崎。投手では、斉藤、和田、杉内、新垣、寺原。投打ともに生え抜きの選手を育てた王監督の手腕です。
 「昔は若い選手の欠点が気になったが、今は若い選手の長所を見つけて伸ばすようにしている」。ある程度の負け試合は覚悟して、若手を使い続ける。これがダイエーを強くした王監督の人使いの極意です。
 5月で64歳。ダイエー監督10年目。連続日本一へ挑戦する今年。それは「記録の男」から「記憶に残る監督」へと新たな歴史を刻む年、そして、新たな不可能に挑む年でもあるのです。


【野崎靖博】


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