選手との深い絆が初のメダルをもたらした。リオデジャネイロ・パラリンピック陸上女子400メートルで銅メダルを獲得した辻沙絵(22=日体大)を指導する、日体大の水野洋子氏(47)が29日、同大の東京・世田谷キャンパスで行われた、20年東京五輪・パラリンピックに向けた「大学アスリートシンポジウム」に出席し、リオ大会までの思いを語った。

 水野氏はハンドボール部から陸上部パラアスリート部門に入部した辻へ、競技力向上のためには「考えながら行う」「自身の意志で取り組む」「選手とコーチの良好な関係」の3つのポイントを挙げてきた。会場の大型スクリーンには、辻との3枚の写真を映した。その中に、リオ大会の400メートル決勝直後、水野氏が銅メダルを首から提げた写真があった。「本番前夜は2人とも緊張して、『ダメだったら日本でまた一緒にやろう』とも言いました。互いを信じるしかないという思いで、一番先にメダルを持ってきてくれて、本当、本当にうれしくて一緒に泣きました。選手との絆が、改めて大切だなと思いました」。水野氏は声を震わせながら説明した。辻は決勝後、ミックスゾーン(取材エリア)で記者から「メダルを触らせてほしい」とお願いされたが、それを断り、最も世話になった水野氏へ最初にメダルをかけた。

 選手村などでも“親子”と間違えられるほど仲が良い2人。自称ステージママという水野氏は、娘のように服装や髪形などにも助言してきた。辻が試合中、身に付ける金色ネックレスは、水野氏が「パラリンピックで金メダルを」との思いを込めて、贈った。

 日体大は20年東京五輪・パラリンピックで卒業生含め「選手70人出場」の目標に掲げている。現在、パラアスリート部門には辻含め2人しか所属していないが、4年後に向けて増員予定だ。水野氏は20年大会では「複数の選手でメダル獲得」と意気込み、辻2世誕生を目指している。