リオデジャネイロ五輪の柔道は12日で最終日を迎え、日本男子は6階級までで金メダル2個を含む全階級メダルと健闘している。

 優勝を逃しても決して勝負を捨てない各選手の気迫は、井上康生監督が地道に続けた意識改革が結実した証しだ。

 4年前の11月27日が始まりだった。史上初の金メダルゼロのロンドン五輪後、当時34歳の井上監督が就任。初の国際大会となるグランドスラム東京大会前に選手、コーチ陣の前で告げた。「私は4年間、みんなと一緒に命懸けで闘っていくと決めた。だから中途半端な気持ちの人間は今すぐここで辞退してほしい」。同席したコーチは「鬼気迫る雰囲気。全員が圧倒された」と述懐する。

 ロンドン五輪前は試合過多で代表クラスが疲弊し、マンネリ化が進んでいた。井上監督は「闘える尊さ」を植え付けるため、出場機会を均等に与えつつ結果に応じて絞り込みを進めた。それは自らが現役時代に必勝を期した2004年アテネ五輪の4回戦で敗れ、気持ちを立て直せず敗者復活戦にも敗れた苦い経験から起因している。

 「日本柔道は金メダルが絶対とされるが、五輪のメダルがどれほど大きな意味をもつか」。人生に無駄な試合など一つもない。襟を正して畳に向かう若き指揮官の姿が選手全員に浸透し、日本男子は復活の一歩を刻んだ。