<月刊セルジオ>

 日刊スポーツ評論家のセルジオ越後氏(72)による新コラム「月刊セルジオ」を来年6月のW杯ロシア大会まで随時お届けします。おなじみの辛口評論で日本のサッカー、世界のサッカーについて持論を展開します。今月は親善試合と日本代表のノルマについてです。

 「W杯本番まで残り8カ月で何をするべきか?」とよく論議になるが、僕に言わせれば「14年のブラジル大会に敗退してから3年数カ月、日本協会は何をしてきたか?」と尋ねたいね。

 アギーレ前監督の就任当初は期待が大きかった。最初(14年9月)にカバニらベストメンバーで来日したウルグアイに歯が立たず、0-2で敗れた。1カ月後にはブラジルとシンガポールで戦って、ネイマールに4発決められて0-4の惨敗。W杯ブラジル大会で負けた反省、世界と戦うための反省が始まった。世界の強豪と当たることで強化できる可能性があった。

 だが、ハリルホジッチ監督になって以降、本当に強い相手との試合はゼロ。スポンサーの関係で国内で親善試合をやらなければならず、いろんな国を呼んだけど、W杯本番へのテストになる試合はなかった。どのくらい強くなったのか、弱くなったのか分からないモヤモヤした状態が続いた。

 アジア杯に敗れ、コンフェデ杯に出られなかった。ドイツなど世界トップと戦う機会を逃したのに、その穴埋め対策もなかった。その意味でW杯ブラジル大会に向かう時より、準備が劣っていると感じる。

 W杯で敗れた反省より、W杯に行けばいいというマンネリ化。出場が決まったら「サバイバル」と言い出すマンネリ化。日本はアジア枠が4・5だから行ける? 2枠だった「ドーハの悲劇」の時より強くなったから出場できる? もう1回振り返って反省すべきだ。

 今回のニュージーランド、ハイチとの親善試合。欧州や南米の予選が佳境でマッチメークの制限があるのは理解できるが、興行だけでは強化にならない。錯覚してしまう。結局、3年以上「海外組」というブランドで興行をしてきた。海外組でも所属クラブでベンチを温めている選手がいる。そのポジションを奪った選手が各国の代表としてW杯に出てくるのだから、勝てるはずがない。日本にとって6回目のW杯だが、最も厳しい状況かもしれない。

 僕はW杯本番に向け「日本代表のノルマは日本サッカー協会が決めてください」と言いたい。協会が与えたノルマは何か? それが知りたい。これまでもそうだけど、協会は決めないんだ。監督に決めさせる。それがちょっと無責任な気がする。

 ハリルホジッチ監督が就任した当時と、協会の会長も、技術委員長も代わっている。もしハリルが負けたら「選んだのは自分たちじゃないよ」という逃げ道もある。ドンマイ、ドンマイって…。政治家や企業に対しては厳しく批判する日本だけど、スポーツには甘い。W杯に出るような国では、サッカー界に対してそんなに甘くないよ。(日刊スポーツ評論家)

 ◆セルジオ越後(えちご) サンパウロ生まれの日系2世で18歳で名門コリンチャンスとプロ契約し、ブラジル代表候補にも選ばれる。72年来日し、J2湘南の前身の藤和不動産でプレーした。93年4月から日刊スポーツ評論家。06年に文科省生涯スポーツ功労者として表彰された。

ザックジャパンの全成績
ザックジャパンの全成績
アギーレジャパン全成績
アギーレジャパン全成績
ハリルジャパン全成績
ハリルジャパン全成績