仙台は本拠地が雪国のため、J1では珍しい長期キャンプを行う。期間はプロ野球と同じで、約1カ月。フィジカルと戦術理解を中心に高める。渡辺晋監督(43)が「苦悶(くもん)を浮かべるシリーズ」と言う過酷なキャンプに、初めて参加する訳ありの「1年目」が、意欲的に取り組んでいる。

 2年目のMF椎橋慧也(19)は、昨年1月に右足首を骨折。チーム合流は同年9月と遅れ、公式戦出場はおろかキャンプにすら参加できなかった。

 同じく高卒新人のMF佐々木匠やDF小島雅也、DF常田克人が、1年間プロで戦う姿を見ていた。刺激も受けたが悔しさも募った。「去年サッカーをやったのは1カ月くらい。キャンプにも行けず、チームメートと話をして仲を深めることができなかった。出だしは失敗したな」。

 そんな時に、支えてくれたのはDF蜂須賀孝治(26)だった。自身も故障に苦しんでいたが、1年目から挫折に苦しむ後輩にエールを送った。「ケガから何を学べるか。復帰した時にパワーアップして戻ってくるのが大事だ」。プロの先輩の教えを、椎橋は確かに受け取った。

 治療中、自ら故障の原因を研究した。ネットや本をあさった。「O脚なので、外側の筋肉が使えていなかったので、膝に疲れがたまるらしい」と原因を突き止めて、改善した。今ではケアに細心の注意を払う。「試合に出て活躍することが目標ですけど、ケガをしないことも大事にしている」。苦しい時期が、椎橋に試合に出られない分、プロの自覚を身につけさせた。

 「1年目」の今季。新鮮な気持ちで取り組んでいる。1日から3日間、Jリーグ研修を法大卒の新人DF永戸勝也(22)とともに朝から晩まで、受講した。「プロとして意識を高めることが、チームを高めて、Jリーグを高めて、日本のサッカーを高めることを知った。24時間365日どう過ごすべきか学んだ」と、かなり集中していたようだ。

 主戦場のボランチには、MF富田晋伍(30)と三田の不動のコンビに、成長著しく今季から副主将の藤村慶太(23)と大卒2年目の差波優人(23)とライバルが多い。だが4日の大宮戦では、1試合目の後半から途中出場。突然の出場にも「ナベさん(渡辺監督)から、いつでも行けるように指示されていた。1試合目から出たいと思っていた」と焦らずにプレーして1試合目の勝利に貢献した。

 リスタートの今季。「めっちゃ、ぎらついています。(ボランチは)一番激戦区だがやりがいがある。少しずつ出場を増やしたい。勝利に貢献したい」。他の新人よりも長い助走をしてきた。飛躍の年へ、ライバルを追い越す準備は万端だ。【秋吉裕介】

 ◆秋吉裕介(あきよしゆうすけ) 1993年(平5)6月28日、神奈川県生まれ。早大卒業後、16年4月入社。同年11月より東北総局に異動し、仙台担当。