<高校サッカー:矢板中央2-1広島観音>◇準々決勝◇5日◇駒場

 矢板中央(栃木)が同県勢24大会ぶり(85年度大会宇都宮学園以来)の4強入りを果たした。地元出身の人気漫才コンビ、U字工事から届いた激励の携帯動画を広島観音(広島)戦直前に見て奮起。地元出身選手が中心のチームワークの良さで、広島県勢2連覇を狙った強豪に逆転勝ちした。関大一(大阪)は府勢としては32大会ぶりの4強入り。9日に国立競技場で行われる準決勝は、矢板中央-山梨学院大付(山梨)、関大一-青森山田(青森)の顔合わせとなった。

 濃厚すぎる栃木なまりの声援で、チームが一丸になった。キックオフ直前のロッカールーム。高橋健二監督(41)は、とちぎテレビのスタッフを通して届けられた、1本の携帯動画を選手たちにみせた。映っていたのはなんと、今をときめく人気お笑いコンビ、U字工事の2人。「矢板中央、ガンバレ!」のエールに、硬い表情の選手たちからも、思わず笑いが起きた。

 ボケの益子卓郎と同じ姓のMF益子直(3年)は「あれでリラックスできましたね。地元の言葉を聞いて、ホッとしました」と振り返った。緊張がほぐれ、自分たちのペースを取り戻せば、もう怖いものはない。後半開始直後に、1点を先制されたが、直後に猛反撃を開始。まるで地元栃木で戦うように、のびのびとピッチを走り回り、後半30分の益子直のゴールで見事逆転勝利した。

 ベンチにも、U字工事の応援サイン色紙が飾られた。まさに地元愛の結実だ。高橋監督は試合後、まるで2人の漫才ネタのように「茨城や群馬には負けたくなかったですから」と切り出した。長年、県勢の低迷が続くこともあり、栃木生まれの有望中学生が、隣県の強豪高校へ流出するようになった。その分、前回大会では前橋育英(群馬)鹿島学園(茨城)がそろって4強入り。今回前橋育英の主軸だった、U―17日本代表MF小島(2年)も栃木県小山市の出身だった。

 高橋監督も隣県に対抗するため、他県から有望選手をかき集めた時期もあった。さらには個人技術を高めるため、ブラジルから短期留学生を招き、練習に参加させたこともあった。だが個の力が高まる一方で、選手たちはまとまりを欠いた。勝負どころで手痛い逆転負けを重ねるうちに、同監督は「やはりウチを普通に受験する地元選手で、まとまりあるチームをつくるべき」と考えを変えた。

 2回戦で近大和歌山を1-0、3回戦作陽にはPKで、そしてこの日の逆転と、まとまりを武器にして、いままで苦手だった接戦で白星を積み重ねてきた。高橋監督は「たとえば左MFの益子直と左DFの阿久津は、(栃木の)馬頭中から一緒だから、息がピッタリ。チームはよくまとまってくれている」としみじみと話した。【塩畑大輔】