<オーストラリア発・記者コラム>

 「ドンッ!」。ハンマーで何かをたたいたような爆発音が、取材エリアに響いた。

 ヨルダン戦の公式練習が行われた19日のこと。音が響いてきた先は、日本代表の選手が乗っているバスの中からだった。テレビ、ペン記者を含め、50人以上いた報道陣は、驚いて一斉にバスの方向を見つめた。取材を受けていたDF長友は、その音を耳にした途端、「すいません。怒られてしまうので」と言って、小走りでバスに乗り込んだ。

 練習を終えて、既にバスに乗っていた選手の1人が、取材を受けている数人に向けて「早くバスに乗れ」という合図だったのだろう。しばし、代表合宿中には、そんな行動に出る選手が目撃される。だが、軽く窓をノックするような「合図」ではなかった。19日の爆発音は、バスの窓が割れてしまうのではないかと思われるほど思い切り“殴った”暴挙だった。

 取材を受ける、受けないは、選手の自由だ。現に本田や長友は、自らの意思で、きちんと報道陣に受け答えする日と、話さない日を明確にしている。一方で、毎日のように、丁寧に質問が終わるまで、取材に応じる選手もいる。取材に応じる姿勢は、おのおのの判断。それは尊重するが、一つ間違ってはいけないのは、丁寧に取材に応じている選手の邪魔をする権利は、どの選手にも一切、ない。

 取材を力ずくで終わらせた選手の顔は、窓にスモークが張られていたため、分からない。悲しいのは、日本代表にそのような選手がいること。そしてスタッフも含め、そのような選手に注意をしてあげる仲間が、いないこと。【日本代表担当=益子浩一】