<ロンドン五輪アジア最終予選:日本2-0バーレーン>◇C組◇14日◇国立>

 ロンドンへの切符をたぐり寄せたのはMF扇原貴宏(20)とMF清武弘嗣(22)のC大阪コンビ。そして決定付けたのは、やはり清武だった。1点リードで迎えた後半14分、左サイドから同じ大分ユース出身のMF東慶悟(21=大宮)の低いクロスを、ファーサイドに走り込んで豪快に決めた。2月のアジア最終予選2試合はケガでチームを離れていたが、常に心はチームとともにあった。A代表との掛け持ちだが「五輪は経験で済ますのではなく、本当にメダルを狙いにいく」。頼もしい男が完全復活した。

 試合後のピッチで、ともに五輪予選を戦い抜いたメンバーと、固い握手を交わした。緊張感から解き放たれ、満面の笑みがこぼれた。攻撃的右MFとして先発。前線のMF東、FW原口、FW大津と連係し、何度もチャンスを作った。前半31分には、ライン際までボールを追いかけると、相手DFを背にくるりとターンし、ゴール前にパス。見せ場を演出した。

 自分が走り込めば、ボールが来る。そう信じていた。後半14分、左サイドからMF東がゴール前にクロスを入れた。ニアサイドでは大津がつぶれ役になり、DFを引きつけていた。清武は「東がいい所に蹴りこんでくれて、うまくこぼれて来た。ボールが来ると思いながら走っていた。何も考えず、振り抜いた。気持ちが入っていたので、うまく力が乗ってくれた」。右足でのシュートがゴール左隅に突き刺さった。

 五輪への思いは、常に持っていた。昨年8月、初めてA代表に招集されてからも「W杯予選にも出たいけど、五輪にも出たい」。五輪出場への思いを忘れることはなかった。

 2月の最終予選2試合は、左腓腹(ひふく)筋挫傷でチームを離脱。「自分のせいだと思う。自分の弱さだった」。悔しさはあった。しかしマレーシア戦前には大分ユース時代の後輩、東に「オレのぶんも頑張ってこい!」とメールで激励。仲のいいFW永井やMF山口の携帯を鳴らし「日本でテレビを見て応援しているから頼んだぞ!」と、メッセージをチームに伝えてもらうように頼んだ。離れていても常に心はチームと一緒だった。

 実は、4年前の北京五輪予選の記憶はほとんどないという。「誰が出ていて、どんなスコアだったのか、全然覚えてないんです」。右足をケガしてシーズンを棒に振り、リハビリを続けていたプロ1年目。当時は世代別の代表にも選ばれず、4年後に自らがチームの中心となって五輪代表を引っ張っていくことは想像もしていなかった。だが、今は違う。「経験で済ますのではなく、本当にメダルを狙いたい。メダルをとれるチャンスはある」。強い気持ちで、ロンドンへ向かう。【保坂恭子】