G大阪のFW宇佐美貴史(22)が日本代表合流前に景気づけの1発を決めた。後半19分に右足で狙いすました豪快弾。敵地で甲府を破り、不振にあえいだ昨季3冠王者にリーグ3戦目で今季初白星をもたらした。今日23日から始まる新生ハリルジャパンに合流。18年W杯ロシア大会の新エース候補が、代表での再出発を果たす。

 南アルプスを望む敵地甲府で、どうしても欲しかったゴールが生まれた。1点リードの後半19分。パトリックが起点となり阿部からもらったパスを、宇佐美が迷わず右足で振り抜いた。ゴールネットが激しく揺れるのを見届けると、歓喜に沸くベンチへ走った。今季2点目は、PK以外で初めて奪ったゴール。不振にあえいだ王者を救ったのは、2年4カ月ぶりに代表復帰を果たしたエースだった。

 「その前からの流れで、いい形ができていた。あのテンポからシュートを打つのはイメージしていました。そのイメージのまま、表現することができた」

 瞬時の判断と、瞬発力が得点に結びついた。両手首に巻く白いテーピング。世界的にもブラジル代表FWネイマール、ウルグアイ代表FWスアレスらが手首を固く固定して大事な試合に臨む。選手によって理由はさまざまだが、手首が締め付けられることで一種の緊張状態となり、シュートの際に体重がうまく足に伝達する効果もあるという。白く光るテーピングが、豪快な得点に結びついた。

 喜びを分かち合いたい人がいた。得点を決めた宇佐美が真っ先に抱き合ったのは、清野大輔ドクター(41)だった。昨年2月に左腓骨(ひこつ)筋腱(けん)脱臼の重傷を負い、14年W杯出場が絶望的になった際、涙を流してくれた人だ。今月限りでクラブを去る清野ドクターは「ずっと2人で病院に通いましたからね。シャイで言葉遣いも荒いけど、本当は優しいヤツです」としみじみと言った。

 自信をつけ、今日23日からは新生日本代表に合流する。長谷川監督は「代表選手らしく気持ちが入っていた。献身的で今季一番いいプレーだ」と評価。兄貴分のDF岩下も「代表に呼ばれたくらいで満足してもらったら困る。もっとアイツならやれる」。日本のエース候補は、さらに輝きを増していく。【益子浩一】