史上初の無敗ステージ優勝が見えてきた! 首位の浦和が、FW興梠慎三(28)の決勝ゴールで清水を退け、J1記録の開幕からの連続無敗試合を15に伸ばした。第1ステージは残り2試合。次節(20日)の神戸戦で引き分け以上なら、9年ぶりの国内タイトルが決まるところまでこぎ着けた。選手たちは早くも、その先にある「17戦無敗でのステージ優勝」と「年間王者」を見据えた。

 どんな試合展開であれ、勝ち点を重ねられるのが、今の浦和の強さだ。後半7分。興梠は、ゴール前に突進したMF柏木からのこぼれ球を拾うと、右足で大きなシュートモーションに入った。「相手DFがスライディングしてくるのが見えた」と打たずに切り返し、180度ターンしてから、左足を巻き込むように振り抜く。シュートはDFの間をすり抜け、ゴール右サイドのネットを揺らした。

 「ファーを狙った方が、入らなくても詰めてきた味方選手がシュートしやすい」とどこまでも冷静な判断だった。前半は清水の勢いに押され気味。興梠も好機は少なかったが、後半ようやく来た得点機でも、焦ることはなかった。

 この冷静さが、今季の強さを象徴している。MF柏木は「みんな後半は点が取れると思ってる。去年までは『45分しかない』だったのが、今年は『まだ15分もある』とさえ思える」と言う。今季は前半8得点に対し、後半25得点。その自信が、焦って攻めに出てはカウンターで失点する、昨年までの悪癖を消した。

 勝機を見逃さない勝負強さもある。後半開始直後。柏木は腰の違和感が強まったと、ベンチに交代の準備を求めた。しかし興梠の決勝弾の場面は「ここはいける」と果敢にゴール前に突進し、決定機をつくった。試合を決める仕事をすると「あと10分できると伝えたつもりだったけど、思ったより早く交代になった。まあ、たまにはいいでしょ」と悠々と退いた。

 1ステージ制の昨季、今回と同じく残り3試合の時点で優勝に王手をかけた。11月22日、勝てば優勝決定のG大阪との直接対決。「ここで勝って決めたい」との気持ちが空回りし、後半ロスタイムの2失点で敗れた。終盤に強行出場した右腓骨(ひこつ)骨折の興梠も、完治に半年を要するほどにケガを悪化させた。

 反省も踏まえ、今季は「残り3試合のどこかで決まればいい」と言い合う。太もも裏に張りがあるDF森脇を休ませ、柏木も早々に交代させるなど、用兵面でも余裕がある。ペトロビッチ監督は「今日の勝利でほぼ優勝を手中に収めたと言っていい」と宣言した。

 選手も先を見据える。柏木は「このままステージ無敗でいきたい。今は負ける気しない」とうなずいた。国内タイトルから遠ざかること9年。ペトロビッチ監督就任から3年間も、優勝争いを重ねながら、土壇場で苦杯をなめてきた。長いトンネルの先には、無敗でのステージ制覇という歴史的偉業が手招きしている。【塩畑大輔】

 ◆無敗優勝 浦和は開幕から11勝4分けの15戦負けなし。このまま負けなしで優勝すればJリーグ史上初となる。過去のステージ優勝チームの最少敗戦数は1敗で、00年第2Sの鹿島、01年第1Sの磐田、02年第1Sの磐田、04年第1Sの横浜が記録。いずれも優勝決定節までに1敗していた。

 ◆優勝の行方 優勝の可能性があった浦和は清水に勝利を収めたものの、G大阪が神戸と引き分けたため、優勝決定は次節20日以降に持ち越しとなった。浦和とG大阪の勝ち点差は9。浦和が残り2試合で勝ち点1を加えるか、3試合を残すG大阪が1試合でも引き分けるか負けると、浦和のステージ優勝が決まる。G大阪が優勝するには残り試合を3連勝、浦和が2連敗したケースのみ。この場合、勝ち点37で並び、<1>得失点差<2>総得点<3>当該チーム間の対戦成績<4>反則ポイントの順で順位を決める。現在の得失点差は浦和が19、G大阪が10で9差。総得点も浦和が33、G大阪が20と浦和が優位に立つ。当該チーム間の対戦も、5月2日に浦和が1-0で勝っている。なお2位の広島(勝ち点30)3位東京(勝ち点29)とも、残り2試合を全勝しても勝ち点で浦和の37を上回ることができなくなった。