広島はFW佐藤寿人(34)が、スタジアムの雰囲気を一変させた。

 後半16分、4試合ぶりとなる途中出場。ピッチに入っただけで、待ちかねたホームのサポーターからは地鳴りのような大歓声が起きた。

 前半からハイペースでプレスをかけてきた浦和が、ちょうど足が止まった時間帯でもあった。1点を先制したものの、その後はほぼ一方的に自陣に押し込まれていたチームが、佐藤がつくった雰囲気に後押しされるように、一気に攻勢に転じた。

 DF塩谷がセットプレー、流れからと立て続けに得点を挙げて逆転。佐藤自身も後半38分、相手のミスパスをさらってゴールを決めた。「ベンチ全員で準備をしていたので」と、真っ先にベンチのメンバーに抱きつき、喜びを分かち合った。

 今季はケガもあり、出場機会が限られていた。14試合ぶりの得点に、試合後のヒーローインタビューでは、感極まって涙する場面もあった。

 試合前日には、3月に誕生した第3子を抱いて浦和の練習場を訪れ、恩師ペトロビッチ監督に丁寧にあいさつをした。義理は欠かさない。敬意も忘れない。だが、試合では全力で結果を出す。スポーツマンシップを体現する男は、試合後も鳴りやまない拍手に包まれていた。