浦和が年間勝ち点1位を決めた。最終節のホーム横浜戦は1-1で引き分けたが、勝ち点1差で2位だった川崎がG大阪に敗れたため、トップを守った。

 後半21分。浦和MF柏木陽介(28)は、MF関根のシュートがGKにはじかれた瞬間、すでにこぼれ球への最短距離にいた。「関根はコースを狙える体勢ちゃうかった。GKの正面を突けば、こっちにこぼれて来ると読んだ」。左から迫る柏木の前に体を投げ出す際のGKの体勢もイメージできた。冷静に右の脇の下を抜き、ネットをゆらした。

 その後の動きだしも、誰よりも早かった。両手を広げ、一目散にゴール裏を目がけて走った。駆け寄る選手にもみくちゃにされたが、歓喜の輪がとけるとサポーターに向け、胸のエンブレムをたたいてみせた。

 そこに向かって走ると決めていた。柏木は「みんな待ってくれていたと思う。喜びあえてよかった」と話した。サポーターとの関係について、しみじみと話すのには、理由がある。8月。大宮との「さいたまダービー」の後、司令塔はサポーターに異論を唱えた。

 2-2の引き分けも、攻守の目まぐるしい入れ替わりが続く好ゲームだった。しかし試合後に待っていたのはブーイング。柏木は言った。「サポーター同士のライバル意識も分かるけど、戦ってるオレたちをちゃんと見てほしい」。

 目先の勝敗より、優勝につながる内容と勝ち点を重視するべきだと思った。「オレが批判されるのは全然かまわん。みんなが変わらないと勝てへん」。柏木本人も「勝つために変わる」姿勢を示した。食生活の改善、体幹トレーニングの徹底で好パフォーマンスを続けた。リーグ終盤戦は、大好きな酒まで断った。

 シーズンを通しMVP級の活躍を続け、チームを引っ張る司令塔に、サポーターも応えた。エリア内に8人が入って守りを固める横浜を攻めあぐねても、あたたかい応援が続いた。後半開始時には、サポーターがゴール裏中央に密集し、力強く選手を激励した。一緒に戦い、ついに結果を出した。その手応えが、柏木に「本当にうれしい」と何度も言わせた。【塩畑大輔】

 ▼J1通算50得点 浦和MF柏木が達成。史上81人目。初得点は広島時代の06年8月23日G大阪戦。前所属の広島では通算81試合14得点、10年に浦和移籍後は通算228試合36得点。