鹿島の堅守が土壇場で復活した。シュート本数は10対11と下回ったが、前線からの連動した守備で粘り勝ち。リーグ最多68得点の相手に、決定的な枠内シュートを1本も許さなかった。

 優勝した第1Sは17戦10失点も、第2Sは24失点。準決勝を前に守備リーダーのDF昌子は伝統の力を借りた。普段は試合前にサッカーの映像を見ず音楽を聴く。しかし今回だけはリーグ3連覇を遂げた09年の最終節、浦和戦を3年ぶりに見た。

 完全アウェーの中、当時のエース興梠の1点を守り抜いた試合。背番号3の先輩、DF岩政が決定的なシュートに左足を伸ばしCKに逃れていた。「これが鹿島の3番の仕事」。再現したかのように後半44分、昌子は縦パスに右足を上げ、わずかに当てた。触らなければゴール前のFW大久保に渡り、失点していた可能性が高い。「最後の1歩を出せるかどうか」。17冠王者のDNAが一発勝負で呼び覚まされた。【木下淳】