開幕戦で初出場の関東第一(東京B)が全国制覇の経験もある野洲(滋賀)を1-0で下し、初勝利を挙げた。一方的に攻められたが後半にPKで先制。正GKの負傷で後半途中から急きょ出場した1年生GKの北村海チデイ(かいちでい)が、終了間際に好セーブを連発しチームを救った。ナイジェリア人の父と日本人の母を持つ16歳が、甲子園で活躍した先輩、楽天オコエ瑠偉外野手(19)に負けじと全国の舞台で輝いた。

 出番は突然やってきた。後半14分。1年生GK北村が急きょピッチに入った。正GK内野が接触プレーで負傷。これが公式戦2試合目の出場だった。直後のゴールキックを軽々と敵陣に蹴り込んで能力の片りんをみせ、うまく試合に入った。「正直ビックリしましたけど、落ち着いてできました」。16歳は冷静だった。

 北村が入って4分後にPKで先制した。野洲に一方的に攻められ続け、明らかな力の差があった。シュート数は前後半1本ずつの計2本で相手は12本。ワンチャンスを生かし、勝った。

 終了間際の北村のスーパーセーブで逃げ切った。「自分の長所を生かせた」。ゴール右隅への強烈なヘディングシュートに爆発的なジャンプ力で反応。予備動作なしでクロスバー近くまで舞い上がり右手1本で阻止した。北村の1年15組の担任でもある小野監督は「大舞台に強い子だというのは分かっていたし、バネが違う」。抜群の身体能力が勝負を分けた。

 ドッジボールが好きで、J1浦和に憧れ、サッカーを始めた時、自然と手でボールを扱うことができるGKを選んだ。身長172センチ。サイズには恵まれていないが、それを補う身体能力を両親から受け継いだ。

 関東第一といえば野球部が有名でOBに楽天オコエがいる。北村はそのオコエ先輩と同じ、ナイジェリア人の父と日本人の母を持つ。昨年夏、甲子園4強まで進んだ先輩について聞かれると「オコエ選手より活躍したい」。正GK内野は大会中の復帰が絶望的。新守護神が関東第一ゴールに仁王立ちする。【八反誠】

 ◆北村海チデイ(きたむら・かいちでい)2000年(平12)9月17日、神奈川県生まれ。埼玉県に引っ越し、小学校1年でサッカーを始める。入学試験やテストの答案の名前の欄には「北村海」と書く。「チデイ」はミドルネームだというが意味は「聞いたことがない」。好きな選手はマンチェスターUのスペイン代表GKデヘア。172センチ、60キロ。

 ◆関東第一 1925年(大14)創立の私立校。サッカー部は1967年(昭42)創部。15年夏の総体(兵庫インターハイ)3位が全国大会での最高成績。OBにはJ2横浜FCのGK渋谷がいる。江戸川区松島2の10の11。松橋勝政校長。