完敗したが、持てる力は出し切ったつもりだ。FC東京MF高萩洋次郎(30)が、東日本大震災から6年の日にフル出場した。福島県いわき市出身。6年前の津波で自宅が半壊し、祖母は今も行方が分かっていない。試合前の黙とうでは人一倍の思いを持ちながら、ピッチではボランチとして冷静にパスをさばき、球際でちゅうちょせず、最後までパスカットを狙った。

 「僕の所でもミスがあったし、個人としても反省したい」と悔しい敗戦となったが「3・11に試合ができる幸せ、喜びは忘れないように。そう思いながら試合に入りました。最後までプレーする、やり続けるということを思いながら、やりました」。シュート2本。猛攻には屈したが、最後まで諦めたつもりはない。

 東西2大都市の対決で迎えた3月11日。篠田善之監督(45)からは、試合前のミーティングで「サッカーができる喜びをかみしめ、今も苦しんでいる方たちのためにすべてを出そう」と言われて送り出された。結果は伴わなかったが、高萩は「まだ3試合目。もっと良くしていかないと。自分のミスもなくしていきたい」と切り替えた。チームは大型補強で話題になる一方で、まだまだ連係面は構築途中だ。自身も加入1年目。シーズンの最後に喜んでもらえるよう、節目に味わった悔しさを持ち続けていく。【木下淳】