鹿島アントラーズがムアントン(タイ)を2-1で破り、E組1位で6年ぶりに決勝トーナメント(T)に進出した。FW鈴木優磨(21)が前半19分に右足で先制し、同点の後半15分には右クロスを合わせ、プロ初の公式戦2得点で勝ち越した。決勝T1回戦でG組2位の広州恒大(中国)と対戦する。F組の浦和はFCソウル(韓国)に0-1で敗れたものの1位通過。G組の川崎Fを含め、日本勢3チームの1位突破は09年以来8年ぶりとなった。

 鹿島FW鈴木に歴史的ストライカー2人が乗り移ったかのようだった。前半19分の先制点。MF遠藤のスルーパスに抜け出すと、RマドリードFWロナルドのようにGKの動きを冷静に見て、右足で決めた。今季はチーム始動から3月18日のリーグ清水戦まで対外試合13戦10発と量産も、その後は出場7戦無得点。「ずっと点を取れていなくて鬱憤(うっぷん)がたまっていた」と昨年のクラブW杯で注目を浴びた“Cロナポーズ”で雄たけびを上げた。同決勝の直接対決後に本人からもらったロナルドのジャージーは今でもクラブハウスのロッカーに飾っている。「お守りっすね」。活力を常に得られる感謝のアイテムでもある。

 2点目は86年W杯メキシコ大会でのマラドーナのような“神の手ゴール”だった。後半15分、遠藤の右クロスに飛び込んだ。頭をかすり、左腕に当たってネットを揺らした。真相究明を求める取材陣を「まあ、映像を見てください」とニヤリと笑ってかわした。鹿島では初の公式戦2得点に「朝起きた時から複数得点できる予感があった。タイと何度もやって得点のイメージが出来ていたから。本当はハットトリックしたいと思っていたので悔しい」。何度もあった好機を外した反省も忘れなかった。

 鈴木の活躍で1位突破し、次は13年と15年にアジア王者となった広州恒大との対戦が決まった。「複雑ですね…」と苦笑いも一瞬。「ACL初制覇の目標の中で、遅かれ早かれたたかないといけない相手。早めにたたきたい」と気後れするところは一切ない。大舞台こそ燃える男が、復調の兆しをつかんだ2発だった。【鎌田直秀】