新型コロナウイルスの感染拡大で中断していたJリーグがいよいよ再開する。J1は7月4日、J2は今月27日に再開、J3は開幕となる。当面、無観客試合となるJリーグの見方も変わる中、ウイルスと共存しながら楽しむ観戦法に着目。「さあリーグ再開! Jのミカタ」と題し、新しい応援スタイルを紹介する。第1回はJリーグが導入を検討している「リモート応援」に迫る。

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無観客でも声援が響き渡った。磐田と沼津が練習試合を行ったヤマハスタジアムで、ヤマハ株式会社が開発したリモート応援システム「リモートチアラー」が初めて選手の前でテストされた。試合中は「ジュビロ」コールに合わせて手拍子が鳴る。遠隔で操作されたサポーターの「声」に背中を押され、東京五輪世代のFW小川航基(22)も2得点と躍動した。

Jリーグが導入を検討している「リモート応援」はテレビやインターネット中継で観戦するサポーターの声援などをスタジアムに届ける独自の新技術。専用のスマートフォンアプリなどで「歓声」「拍手」の声援を送るボタンを押したり、操作するだけで現場に設置されたスピーカーから拡声される。自宅が観客席のような感覚になる画期的なシステムだ。

開発に携わったヤマハの瀬戸優樹氏は自信を持って紹介する。「この状況でも臨場感を味わってほしい。多くの人が利用してもらえれば一体感も生まれます」。アプリ内では応援団のリーダーが利用できる専用ボタンがあり、試合状況を見てチャント(応援歌)を届けられる。利用者は手拍子などを拡声させるスピーカーを選択可能。誹謗(ひぼう)中傷となる「声」は事前に排除できるセキュリティーも万全だという。

最大の魅力は設置の簡易性だ。瀬戸氏は「スタジアムの規模に関係なくできます」。試合時の音響などをコントロールする機器に専用のスマートフォンを接続するだけ。スタジアム既設のスピーカーだけでも音を出せる。ホームの優位性などを出すための音量バランスも調整できることで、より普段の試合に近い雰囲気を作り出せる。

5月にはJ1清水とJ2磐田の協力を得て、実証実験を3度実施した。この日は選手も体感し、サポーターも初めて参加。瀬戸氏は「本番を想定してできた。さらにいいシステムにしていきたい」と意欲を示す。

もともとは会場に行くことが困難な入院中の子どもや障がい者らも楽しんでほしいという思いでプロジェクトを立ち上げた。コロナウイルス感染拡大で開発速度を早め、半年間の前倒しで実証実験を実施。19日開幕のプロ野球数球団からも問い合わせがあるという。

無観客以外の客席を間引いた試合や大声を出せない試合でも活用できる「リモート応援」。スタジアムに足を運べなくても、サポーターの思いは選手に届く。【神谷亮磨】

○…「リモート応援」の中で戦った選手の反応も上々だった。試合後、オンラインで取材に応じたFW小川航は「(応援が)ある、ないでは全くの別物。選手にとっては最後の1歩が出る素晴らしいシステム」と絶賛した。アプリに参加したサポーターはこの日だけでボタンを計190万回押して声援を送ったという。2得点を挙げたMF上原も「応援が背中を押してくれる」と公式戦での導入を推奨した。