東京は3-0で大宮に圧勝。3年ぶりに2位に浮上した。

 芝を踏みしめるたびに、フツフツと自信がわいた。走りだしたら、勢いは止まらない。後半29分。東京DF長友は最後方から全力で駆け上がった。FW平山の背後に迫ると「狙ってました」と相手DFにはじかれたボールをかっさらい、右足でシュート。ダメ押しのプロ初ゴールを決めると「今のチームがあるのは、城福監督のおかげ」と一目散にベンチを目指し、指揮官の胸に飛び込んだ。

 1試合平均15キロを走る脚力を「自分の最大の持ち味ですから」という長友。明大在学中の今季プロ入りしたばかりだが、人もボールも連動するサッカーを体現できる若手として、就任1年目の監督の信頼を得ている。8月の北京五輪を目指すU-23代表に加え、6月にW杯3次予選の集中開催を控える日本代表岡田監督の目にも留まり、4月合宿で初招集された。

 「いつメンバーから外されてもおかしくない」という危機感が、成長を促した。東京は今季、ナビスコ杯を含む公式戦で毎試合スタメンが変わる「日替わり打線」。リーグ初制覇よりも、総合力アップを優先する城福監督の方針で「練習で結果を出せない者は、ピッチに立てない」という厳しさを全選手が痛感している。開幕当初はプレーで勢いが先行し、攻守のバランスを欠いた長友も例外ではない。4月5日札幌戦で金沢に先発を明け渡し、対戦相手の資料映像を自宅に持ち帰って研究する日々が続いた。

 主力と控えの壁がなくなり、羽生やブルーノ・クアドロスら故障者を抱えても、戦力ダウンに直結しない。リーグ戦10節以降でトップ3に浮上したのは、クラブ史上初の快挙。第1~4節まで首位に立った「05年シーズン超え」の期待も高まる。「今の順位はまだ関係ないが、自分たちがどのレベルで戦うのかを知る目安になる」という城福監督。首都に吹く春風が、いよいよ勢いを増してきた。【山下健二郎】