<J1:大分3-2札幌>◇第26節◇23日◇鴨池

 好調大分が暫定ながら首位に躍り出た。2-2の後半ロスタイム、MFエジミウソン(32)のこの日2点目のゴールで札幌を振り切り、公式戦17試合不敗とした。J1タイ記録の6試合連続完封こそならなかったが、最後の最後で勝ち点3を奪い取る攻撃力も発揮。夜に名古屋が千葉に負けたため、得失点差で首位に立った。今季14勝目で、勝ち点は48。J1昇格後の最多勝利は06年の13勝、最多勝ち点も同年の47だったが、今季8試合を残し、ともにクラブ記録を更新した。

 劇的な勝利から6時間。鹿児島から揺られ続けていたバスの中で、大分イレブンが暫定首位に立った。「タイトルを狙う上で、大きな勝ち点3だ」。決勝ゴール後に語ったMFエジミウソンの言葉が、現実に近づいた。

 勝利への執念が、暫定首位の扉を開いた。後半ロスタイムに2度目の同点弾を献上。今季2失点した公式戦は3敗2分けという典型的な“勝てないパターン”に陥りかけたが、この日は違った。掲示された4分はすでに過ぎていた。最後のワンプレー。左CKを蹴るMF鈴木の耳に、ベンチ前に立つMF金崎の「(鈴木)慎吾、いけ~、決めろ!」という悲鳴が届いた。

 鈴木

 あきらめてしまいそうな展開だったが、誰もが負けられないという思いだった。上位に食らいついていくという、意地がぼくらにはあった。

 鈴木のCKをFW高松がヘディング。ゴール前の混戦のこぼれ球にエジミウソンが反応した。ナビスコ杯決勝進出を果たしても、リーグ戦で上位争いを演じても、堅い守備をベースとする戦い方に周囲の評価は厳しかった。対戦した相手チームから「あんなサッカーに負けたことが、悔しい」と陰口をたたかれもした。先行逃げ切りだけでない勝利で、その雑音も封じた。

 DF森重を出場停止で欠いた守備陣は、J1タイ記録となる6試合連続無失点は逃した。それでも、混戦の優勝争いで生き残っていくたくましさを身につけた1勝だ。シャムスカ監督が言う。「新しい勝ち方を覚えた。苦労に苦労してつかんだ勝ち点3は自信になるし、暫定首位はいいモチベーションになる。だが、これで満足することなく、この順位をこれからも維持していきたい」。ナビスコ杯との2冠獲得も夢物語でなくなった。【村田義治】