<J2:甲府1-1仙台>◇第39節◇4日◇小瀬

 勝てば5月以来となる、2位浮上のチャンスを逃してしまった。J2仙台は、甲府の攻撃力に圧倒され劣勢の中、何とか1-1のドローに持ち込み勝ち点1を拾うにとどまった。シュート数は相手の半分の6本。そんな中、後半9分に右足内転筋痛のキャプテンMF梁勇基(26)が、執念の同点弾を決めた。引き分け数が、J1昇格を争う上位では圧倒的に多い14となり、勝ちきれない今季を象徴する一戦。それでも手負いの主将は、勝ち点「1」を前向きにとらえた。

 負け覚悟の展開だった。試合開始から甲府FWサーレス、マラニョンのスピードある攻撃に苦しみ、防戦一方。前半29分に左サイドバックの田村が負傷交代すると、ますます守勢にまわされた。攻撃の核となるMF関口までもが、最終ラインで体を張り続ける。前半は、シュート1本すら打てなかった。

 後半に入り、ピッチ上で梁と関口が頻繁に声を掛け合っていた。

 梁

 ツートップが、すごいマークを受けていたので「セキ(関口)とオレのところでボールを受けないと、攻めるのは難しい」と声をかけた。

 修正は的中した。PKで先制された、わずか2分後の後半9分、関口の右クロスを、痛めている右足でも左足でもない「珍しい頭」(梁)で奪ったゴール。やっと出たチーム1本目のシュートは、頼もしい主将の4戦連続得点だ。「いいボールが来たから、しっかり決められて良かった」と梁は胸を張った。

 もちろん勝ち点3が欲しかった。勝てば5月18日以来の、自動昇格圏内の2位浮上だった。手倉森監督は「2位になるチャンスを逃して悔しいが、勢いのあった甲府をPKの1失点に封じ込められたのは大きい」と前向きだが、今季繰り返し続けている「勝ちきれない仙台」に逆戻りする怖さもある。勝ち点計算のサッカーに、さほど関係のない数字だが「年間勝率5割以下」が決まった。

 だが、この期に及んで泣き言をいっても始まらない。主将の梁は、引き締まった顔でこう言った。「今日の勝ち点1は、下を向かなくていい。残り6戦しかないからポジティブに考える。踏ん張りどころです」。この日拾った勝ち点1の価値の大きさを、J1昇格の形で証明する。【山崎安昭】