<天皇杯:磐田3-1栃木SC>◇4回戦◇2日◇ヤマハ

 “サブ組”の意地が結集した。磐田が栃木SCを3-1で下して、12年連続で初戦を突破した。リーグ戦の前節名古屋戦から先発10人を入れ替えて臨んだ中、右ひざのケガから224日ぶりに公式戦出場したMF太田吉彰(25)が3点目を決めるなど、底力を発揮。リーグ戦で自動降格圏内17位と苦しむ“トップチーム”に活力を与えた。上り調子で、8日の静岡ダービー清水戦(エコパ)に挑む。

 待ち望まれたスピードスターが、いきなりやってのけた。MF太田は右サイドから中に切り込むと、FWカレンにボールを預けた。だが、ダッシュはやめない。そのまま左前方に走り抜け、カレンのスルーパスを引き出した。ケガとは反対の左足でゴール右に流し込むと、サポーターの歓喜は最高潮に達した。後半27分。224日ぶりに公式戦のピッチに立ち、まだ9分しかたっていない中での、復活を告げるゴールだった。

 「(J1残留の)切り札だとサポーターも周りの選手も言ってくれていた。それに応えられないようじゃ普通の選手。確実に応えたかった。この点が、今後のJリーグに絶対生きてくる」。

 4月9日の練習試合で右ひざ前十字靱帯(じんたい)を損傷し、手術を受けた。全治半年。だが、本当の復活には、1年はかかると言われた。1度は今季絶望もささやかれた。それでも「苦しむチームの力になりたい」。その一心で、疲れて倒れ込むほどのリハビリをこなしてきた。MF河村は「持ってる男は違うね」とおだて、1得点1アシストのFW中山も「いい戦力として加わってくれるんじゃないか」と期待した。

 リーグで17位に苦しむチームは今週、天皇杯とリーグ戦のメンバーを分けた。今回はいわば「サブ組」。そのことに対する意地が、全員にあった。DF鈴木がDFラインをまとめ、FWカレンも2アシスト。MF名波は「3点目は、トップじゃ入ってこない動き。太田だから入ってきた。この試合を見て、トップがどう感じるかだね」と言った。残り4試合を前に、磐田は戦力の底上げに成功した。【今村健人】