<J1:磐田1-0清水>◇第31節◇8日◇静岡

 残留争いをする磐田FW前田遼一(27)が、3試合ぶりのゴールでチームの窮地を救った。後半開始わずか18秒で決めた先制弾が、値千金決勝点となり、清水との「静岡ダービー」を制した。古傷の右ひざ痛で練習を回避するなど、不安を抱えながらストライカーとして結果を残した。この勝利でチームは暫定ながら降格圏外の15位に浮上。残り3戦に望みをつないだ。

 前田のストライカーとしての感覚が、研ぎ澄まされた瞬間だった。0-0で迎えた後半開始18秒。FWジウシーニョがDFのミスをついてカットしたボールが、前田の目の前に転がってきた。角度のない場所から右足を振り抜くと、左隅に突き刺さった。「ドリブルをしようと思ったけど、DFが離れたから打った。いいところにいてよかった」。一瞬の好判断が生んだゴールは、チームのリーグ戦通算950点目となった。

 日々の努力が生んだゴールだった。磐田で自分が出場した試合のVTRは、翌日に必ずスタッフから受け取り、家に持ち帰った。出場時間数に限らず、ボールのあるシーンもないシーンも、自分の目で見て復習した。「今回のゴールにはあまり関係ない」と謙虚に話したが、イメージ通りのシュートが自然と生まれたことが、怠ることのなかった努力を物語っていた。

 不安はあった。古傷の右ひざ痛で先週1週間の練習を回避。4日の練習試合福岡戦でゴールを決め、復活アピールしたが、いつ再発するか分からなかった。それでも「カレンがベンチで、万代とヨシ(太田)がメンバーから外れていたからそういう(仲間のためにもという)気持ちはあった」と、出られない選手の分まで90分間走り続けた。

 チームはこの勝利で暫定15位に浮上し、自動降格圏から脱出。だが、9日の千葉と東京Vの結果次第では再び落ちる可能性もある。「負けたら終わりだと思ってやっている。1つ1つ戦っていくしかない」と、前田。エースがゴールを決めた分だけ、チームの残留につながっていく。【栗田成芳】