かつての僚友ゴンを踏み台にして、J1への階段を駆け上がる。J2仙台手倉森誠監督(41)が7日、J1・J2入れ替え戦(10、13日)で、FW中山雅史(41)率いるJ1磐田を、蹴散らす覚悟を語った。2人は22年前のU-20日本代表のチームメート。歳月がたち、指導者とプレーヤーと立場を変えた今、過去の感傷は捨てて、ベガルタを昇格に導く。

 同学年の中山に敬意を払いつつ、指揮官が昇格への思いを熱く語り始めた。

 手倉森監督

 ジュビロの歴史が、中山の歴史だと思う。黄金時代をつくったのも全部、中山。こういう時(入れ替え戦のような大一番)に力を出すのもヤツ。途中から出てきても、本当に気をつけたい。王者を経験したチームを倒して、新しい歴史をつくる。

 指揮官は「打倒磐田=中山」の思いを、22年前を懐古しながら話していた。86年5月3日、韓国・仁川。翌年のWユース(現U-20W杯)出場権をかけた韓国戦のピッチに、2人は立っていた。「オレがトップ下で中山はセンターバック。延長で2-4で負けたんだよ」。

 当時から中山の存在感は際立っていたという。特に感じたのはハートの強さ。「韓国戦で負けてみんなワーワー泣いた。でも翌日、中山だけはケロッと『絶対W杯に出る』と言った。プロもない時代に何を…と思ったけど、有言実行した時は心の底からうれしかったね」と指揮官。その後、スター街道を走るゴンに対し「(自分は)プレーヤーとしては大したことない」と歩む道は分かれたが、指導者としては先んじた今、負けるわけにはいかない。

 中山だけでなく、敵将オフト監督との対戦にも燃える。手倉森監督は「オフトさんの本を読ませてもらっていた。指導者として日本のサッカーに貢献した方。1年目で対戦できるのは本当に光栄」と目を輝かせる。目の前に立ちはだかる2つの壁を乗り越えた先に…。手倉森監督の武者震いが止まらない。【山崎安昭】