ビッグクラブのプライドは譲れない-。浦和の日本代表DF田中マルクス闘莉王(28)が6日、リーグ戦残り14試合での目標を、あえて「優勝」に定めた。さいたま市内での調整後に約20分間、チームへの思いを激白。前日5日、フィンケ監督が、世代交代を理由にシーズン半ばで優勝への厳しい見通しを示したことに「レッズは、優勝しなければいけないチームというのが現実」と反論した。常勝への意識を高め、リーグ中断明け初戦15日のG大阪戦(万博)に臨むつもりだ。

 シーズン半ばで優勝をあきらめたかのような指揮官の言葉に、黙っていられなかった。闘莉王はみけんにしわを寄せながら、あふれる思いを口にした。「レッズは十数年かけて、強いと思われるようになった。3年後、5年後を目指すのもいいが、目の前のシーズンで優勝しないといけないのが現実」。残り14試合で首位鹿島と勝ち点10差。数字上は厳しくても、白旗を掲げるつもりはない。

 前日5日、フィンケ監督が突然会見を開き「レッズは優勝まで13年かかったし、それも1回だけ。私は7位(昨季)のチームを引き受け、世代交代で将来のことを考えている。優勝まで1、2年、時間はかかる」と「常勝」を求める機運をけん制した。06年J1年間王者、07年ACL優勝と浦和の進化に携わってきた者にとって、プライドを傷つけられたのも同然だ。

 「オレは監督の考えに反対するつもりはないし、サポートするつもりでいる」と立場をわきまえた上で「若手の育成は大事だし、成長するのはうれしいけど、それはどこのクラブもやっていること。若手を育てながら、いい選手をとって優勝するのがレッズの魅力。ファンもそれを望んでいるはず」と反論した。一時はJのお荷物とさえ呼ばれた浦和も、アジアを代表する強豪にのし上がった。ここで足踏みすれば振り出しに戻る、という不安もある。

 腹直筋も回復の兆しを見せ、15日G大阪戦での戦列復帰も見えてきた。闘莉王は「オレが話せば、ややこしくなるから。まず復帰して、優勝できるように頑張りたい」と切り替えた。選手も監督もチームの発展を願う気持ちは同じ。あとは「論」より「結果」。逆転Vへ、ラストスパートを仕掛ける。【山下健二郎】