<J1:山形0-1横浜>◇第7節◇17日◇NDスタ

 満身創痍(そうい)のエースが伝家の宝刀でチームを救った。左足甲などを負傷中の横浜の日本代表MF中村俊輔(31)がアウェー山形戦に先発で強行出場。好機が少ない中、意表を突くアイデアでFKを先制点につなげるアシスト。最近4試合で勝利から遠ざかっていたチームを救った。

 一瞬のひらめきだった。後半19分。ゴールまで約30メートルの位置で獲得した横浜のFK。ボールを置いた中村はペナルティーエリア付近で待つ敵味方の動きと位置を確認した。長身を武器にする中沢と栗原の両DFに山形のマークが集中する空気を察知。蹴りだす直前まで、日ごろのセットプレー練習で特長をよく知る2人に合わせようとしたが、ターゲットと弾道を急きょ変更。「(中沢、栗原がいた)ファーサイドに相手の枚数が多かったので、(ニアサイドの)低いところを抜け、その後に誰かが触ってくれればいいボールにした」。相手の裏をかいたコースに飛んだボールにFW坂田が頭を合わせ、先制点をもぎ取った。

 中村が「山形の方がいいサッカーをしていた」と認めたように、横浜の試合運びは低調だった。連動性が乏しく、山形の堅守もあって、シュート数も今季最少の8本に封じ込められた。左足甲の打撲や左足首のねんざなど負傷を抱えて強行出場した中村も、木村監督が「彼の中ではほとんどサッカーをしていなかったと思う」と言うように、本来の出来ではなかった。

 それでも一蹴りで試合を決めてしまうのが、超一流たるゆえん。活路をセットプレーに見いだし、相手の意表を突いてみせる。木村監督も「あのひらめきは彼らしかった」と抜群の判断力を高く評価した。

 横浜はこれで、中村がアシストを記録した4試合はすべて勝利。DF中沢は「頼りすぎている」と中村に負担をかけ過ぎている現状に危機感を抱いている。修羅場を数多く乗り越えてきた天才レフティーも「明日以降、また痛みが出てくるはず」と満身創痍の状態が続く。W杯本大会開幕を2カ月後に控え、司令塔の中村のコンディションは、日本代表の戦いぶりにそのまま直結する。この日は好機を逃さない勝負強さも見せたが、「体のキレは出てきた」と、ファンを安心させる手応えも口にした。【松田秀彦】