<J1:清水4-2京都>◇第10節◇5日◇西京極

 岡ちゃん、日本代表には小野が必要だ!

 清水MF小野伸二(30)が“2アシスト”の活躍で逆転勝利に大きく貢献した。FWフローデ・ヨンセン(36)の同点弾アシストに、決勝点となった日本代表FW岡崎慎司(24)のPK獲得を導く絶妙なパス。首位清水をけん引するプレーは、日本代表MF候補の中でも群を抜く安定感を誇る。過去3度のW杯を経験した「天才」への期待は、日本中に広がっている。

 笑みすら浮かべてピッチに君臨した。誰よりも楽しそうにプレーした。「こどもの日」に見せた小野のプレーには、南アフリカW杯を控える岡田ジャパンには欠如している「夢」と「希望」が満ちあふれていた。

 2点のビハインドを背負って後半がスタート。FW藤本のPKで1点差に詰め寄ると「小野劇場」が幕を開けた。同14分、味方と細かいパスを交換し、右サイドでボールをキープ。「あそこしかなかったね」と、中央のヨンセンへのピンポイントのクロスで、まずは同点弾を演出した。

 さらに、同32分、ゴール前に自ら走りこんでFW藤本からの浮き球のパスを受けると、左アウトサイドを使ったダイレクトパスで、相手DFの背後を狙うFW岡崎へ技ありのスルーパスを配球。「アウト(サイド)で普通に蹴っただけですよ」と話したが、異次元のテクニックと発想に相手DFは混乱。FW岡崎のPK獲得につなげ、決勝点をおぜん立てした。

 清水商時代以来、12年ぶりに戻ってきた故郷で実力を証明し続けている。司令塔として、チームの開幕からリーグ10戦連続無敗(7勝3分け)の原動力となり、この日で2アシスト目をマーク。着実に数字も残している。チームへの普及効果も含めJリーグで現在、最も結果を出しているMFといえる。サッカーファンを中心に、「小野待望論」が高まりを見せている。それでも、試合後には一貫して「次の試合に出られるように一生懸命やるだけ。チームの勝利が一番の喜びです」と、そっけなく、笑顔で答えるだけだ。

 好調の秘訣(ひけつ)は「ストレスをためないこと」だという。「どこに行こうとか決めない。音楽を聴きながらただ車を運転するだけですよ」と、12年ぶりに戻ってきた故郷で景色を眺めながらの「目的地のないドライブ」が日課になっている。入団前は古傷の足首の状態が心配されたがメディカルスタッフは「思っていたよりも(状態は)いい」と口をそろえ、本人も「体調は、ここ何年かで一番いい」と話す。

 今季リーグ10戦で日本代表岡田監督が直接視察したのは第5節横浜戦の1試合のみで、この日の西京極は代表スタッフの姿すらなかった。W杯メンバー発表前の最後の試合となる次節新潟戦は累積警告で出場停止となったが「(W杯のメンバー入りは)期待はしていません。選ばれた人が一生懸命頑張ってくれればいい」と、明るく対応した。調子を落としている国内の日本代表MF陣とは対照的に、躍動感あるプレーを披露している小野の存在は、日本代表の指揮官に届いているのだろうか。【為田聡史】