<J1:C大阪0-4甲府>◇第29節◇15日◇金鳥スタ

 甲府は70メートルドリブルシュートを決めた日本代表FWハーフナー・マイク(24)の2得点などでC大阪に快勝、15位に浮上して降格圏を脱出した。

 甲府2点リードで迎えた後半18分。C大阪が人数をかけて攻め込んできた。ハーフナーは、ペナルティーエリア付近まで戻り、体を張ってボールを奪った。体を敵陣方向に反転させると「あれ?

 前に誰もいない!」。視界には相手GK1人だけが映った。「行けるところまで行ってみよう」。194センチの長身FWは、上体を少しかがめながら、歩幅の大きいドリブルをぐんぐんと加速させた。70メートルに及ぶ独走は、GKの横をかすめてゴールに飛び込む左足シュートで締めくくった。「自分でもびっくり。こんなに長い距離を走って決めたのは小学校以来かな」。甲府サポーターも、大歓声を上げて驚いた。

 体調は万全ではなかった。日本代表合宿中の今月10日に左足首を負傷した。しかし、チームはこの日の試合開始時点で降格圏内の16位。「一番の目標はチームのJ1残留」と言い続けるエースは、患部をテーピングで強く固定し、痛みをこらえてピッチに立った。

 気持ちは結果に結びついた。1点リードで迎えた前半28分、MFパウリーニョの左クロスにスライディングで右足で合わせ、追加点を決めた。「どの部分を使っても、ゴールはゴールですから」。15位だった浦和がこの日負けたため、順位も降格圏外の15位に上昇。華麗な足技で決めた2ゴールは間違いなくチームを勢いづけた。

 観客席にはオランダリーグのフィテッセ関係者の姿もあった。甲府関係者によると来月3日のホーム横浜戦にはブンデスリーガ関係者も観戦に訪れる予定だという。タジキスタン戦2ゴールで一躍時の人になった超大型FWに欧州も熱い視線を送っている。「自分のレベルアップにつながる」と本人も海外移籍は視野に入れている。甲府との契約も今季で切れる。足技で決めた2点は十分なアピールとなったが「(移籍話は)シーズンが終わってから、どうなるかということ」と浮かれた様子はなかった。

 リーグ戦では7月16日のG大阪戦以来の1試合2ゴールで、今季通算16得点。得点ランキングも名古屋FWケネディを抜いて単独トップに躍り出た。「まずはチームが勝つことが大事。そのために積み重ねたものが結果になればいい」。残り5試合。ザックジャパンの新ヒーローから目が離せない。【松田秀彦】