<J1:名古屋2-3鳥栖>◇第9節◇26日◇瑞穂陸

 得点ランク首位を走る鳥栖FW豊田陽平(29)が、早くも通算7ゴール目を決めた。名古屋戦の前半28分に、右足で強烈な先制弾を挙げるなど2得点に絡む活躍。3連勝を飾り、5月12日発表のW杯日本代表23人入りへ最高の“実力行使”となった。

 W杯メンバー入りへ、豊田の執念はすさまじい。前半28分だった。MF金民友の左クロスをファーサイドで受けた豊田が、角度のない場所から右足を豪快に振り抜いた。左ポストに当たり、先制点となった。

 「僕の特長の1つ。狙っていた」という今季9試合目での7得点。厳しいDFのマークを外すために、フェイントを入れて自分のタイミングを作った。後半終了間際のMF谷口の決勝点は、豊田の放ったシュートがクロスバーに当たってから生まれた。

 「W杯イヤーでメンバー発表まで時間がない中でもやるしかない。今の時期にゴールは必要だし、イメージしているところが表現できているのかな」

 後半10分のPKは本来なら豊田の役目だが、金に譲った。韓国船沈没事故を受けて、同国出身の尹晶煥監督や選手が在籍する鳥栖はこの日、喪章を着けてプレー。「PKを豊田に譲ってもらって感謝している」と1得点1アシストの金。エースは自らの8点目よりも仲間の思いを優先させる気遣いも見せた。

 W杯代表発表まで残り4試合。既に得点ランク首位に立ち、発表までに2桁得点も現実的な目標だ。守備も手を抜かず、開幕から9試合フル出場。鳥栖は3連勝で3位に浮上し、優勝争いに再び加わった。

 「身体能力だけで入れるゴールではなく、昨年からいろいろなパターンの練習をしてきている。それが少しずつでも結果に出てきている」。この日戦った名古屋は、石川・星稜高から最初にプロ入りしたクラブだった。その古巣からJ1で初勝利。「それまでのイメージだったり、ジンクスを覆していきたい。継続ではなく、みんなで上へ行きたい」。進化を止めない豊田が、夢の切符を奪おうとしている。【上田博志】