<J2:愛媛2-3札幌>◇第23節◇26日◇ニンスタ

 小野が“激勝”の口火となった。J2札幌が、苦手としていたアウェー愛媛戦で大逆転勝ちを収めた。0-1の前半20分に、MF小野伸二(34)のクロスから同点。後半5分に再びリードされたが、ロスタイム1分にFW都倉賢(28)、同5分にDF櫛引一紀(21)がゴールを奪い、今季初の逆転勝利をつかんだ。初めてフル出場の小野は、加入2戦目で初勝利。札幌はアウェー愛媛戦の連敗を3で止め、6戦負けなしの勝ち点34で6位に浮上した。

 ホッとしていた。後半ロスタイムまで2-1の負け試合を、土壇場の2ゴールで劇的勝利につなげた。喜ぶチームメート、わき上がるスタンドの熱狂とは裏腹に、ロッカールームに引き揚げた小野は、主将の河合に、こうつぶやいた。「ようやく勝てたよ」。デビュー戦の20日大分戦は、自身が交代した後半45分に追いつかれてのドロー。勝利を期待されながら、逃した悔しさと重圧から、少し解放された。

 29・3度の猛暑の中、財前監督から交代するか聞かれたが、志願して90分走り抜いた。0-1の前半20分には右クロスで、追撃の口火となる河合の1点目を、お膳立てした。決勝点には直接、絡んではいないが、ボールを動かし、相手選手をゴール前に集まるようコントロールし、空いた背後のスペースにDF櫛引が走り込んだ。「最後まで戦って結果を出したかった」。天才の戦術眼が陰で勝利を呼び込んだ。

 初勝利の裏には、浦和時代から親交があった河合の支えがあった。6月の合流後、小野は口数も少なく、なかなかチームにとけ込めずにいた。「普段はよく話すやつなのに最初は口数が少なくて。こんな伸二は見たことがなかった」と河合。小野を食事に誘い、他の選手をまじえ「小野の輪」を広げた。小野自身も自主的に居残りシュート練習に交じり、若手にいじられ、徐々にチームになじんでいった。愛媛戦前の24日の選手ミーティングで、最も発言していたのは小野。遠慮せずに、意見を言える空気が出来上がっていた。

 「伸二には相当の重圧があったはず。一緒に勝てて本当にうれしい」。河合にとっては3年ぶりのゴールがかわいい後輩の移籍後初勝利につながった。2戦目での白星に小野は「愛媛まで来てくれた人、北海道で見てくれた人、みんなに勝ち点3をプレゼントできてうれしい」と言った。合流から46日。苦しんでつかんだ1勝を、J1昇格へとつなげていく。【永野高輔】