<J1:大宮1-3川崎F>◇第25節◇23日◇NACK

 嘉人サマサマだ!

 川崎FのFW大久保嘉人(32)が、今季J1で初となるハットトリックを決め、大宮に快勝した。8月30日の名古屋戦で広告看板を破損させてリーグ戦2試合の出場停止となったが、処分明け早々の試合で大爆発した。今季15点目で得点ランクも再び単独トップに浮上し、2位のチームも首位浦和を6差で追走する。

 再びわき上がる情熱を、大久保は感じていた。「早くサッカーがやりたい」。出場停止の処分明け、その思いが爆発した。

 前半21分に縦パスから抜け出し右足で先制すると、後半6分にクロスに合わせて2点目を挙げた。それでも満足できなかった。「今日は絶対取りにいこうと思って。トラップした瞬間にイメージした」。34分、右サイドで中村のパスを受けるとDFを引きずりながらゴール前へ突進。角度のない位置から右足アウトでGKの頭上を鋭く抜いた。「後半15分から両脚がつっていたんだけど」。気持ち良さそうに汗を拭った。

 C大阪時代の04年以来、10年ぶり2度目のハットトリック。神戸FWペドロ・ジュニオールに得点ランク1位の座を奪われていたが、戦列復帰するや、いきなりの3ゴールで返り咲いた。「俺は全然気にしてなかったけど、周りから言われて腹が立ったから『1試合で抜いてやる』って宣言した」。昨季得点王が、意地とプライドを見せつけた。

 ドスン…ドスン…。川崎市の麻生グラウンドに、ゴールボードをたたく音が響き渡る。出場停止の期間中、大久保は1人居残りでシュートを繰り返していた。時折コーチと相談し、足の動きを確認しながら「足首を固めたほうが、力が入る」。得点を量産した昨季と比べ、打ち込みの量は半分程度。「人間はすぐ忘れちゃうから。思い出すだけ」と、図らずも得た3週間の“オフ”で感覚を取り戻そうとシュート練習に打ち込んだ。その成果が出た。

 チームメートは「嘉人サマサマ」と脱帽。中村は「今日は嘉人の良さが凝縮された試合。俺もあんな男になりたい」と称賛した。一方で、前日に「10試合分の活躍を」とあおった風間監督は、あえて「彼には高いものを求めているので(まだ)2試合分」と話した。

 フル出場で勢いをもたらし、チームも鹿島と並ぶ最多46得点。「4点目も狙ってたけどね。俺がゴールを取ればチームの勝利に近づくから」。残り9試合、復活したエースが頂点へ焦点を定めた。【桑原亮】

 ▼ハットトリック

 川崎FのFW大久保が、23日の大宮戦で達成。J1で今季初、通算208回目。大久保はC大阪時代の04年9月19日の市原(現千葉)戦以来、10年ぶり2回目。10年ぶりのハットは、FW柳沢敦(仙台)の8年ぶり(98~06年=当時鹿島)を更新するJ1の最長ブランク記録となった。大久保の1試合2ゴールの回数は通算26回でFW中山雅史と並び歴代最多だが、1試合3得点以上のハットトリックとなると、中山が7回記録しているのに対して大久保は過去に1回だけだった。