出さない、言わない、見せない-。

 トヨタ

 クラブW杯で世界一を狙うマンチェスターU(イングランド)の名将アレックス・ファーガソン監督(66)が日本でも「我流」を貫いた。16日、18日のG大阪戦に向け、横浜市内で公式会見に臨んだ。会見にはC・ロナウド、ルーニーら主力選手を出さず、メディアの質問にも具体性のある回答は控えた。さらに同日夜の練習も完全非公開にするなど、ピッチ内外で徹底した情報管理を行った。

 欧州を遠く離れても、ファーガソン監督の情報管理は徹底していた。公式会見に連れてきたのは、MFフレッチャーただ1人。豊富な運動量と献身的なプレーが持ち味の守備的な選手。攻撃サッカーを特長とするマンUにあって、脇を固める選手だ。C・ロナウド、ルーニーらチームの顔となる選手を隠し、情報を最低限に抑える狙いが見えた。

 ジャージー姿の指揮官は、記者の質問に落ち着いた表情で、当たり障りのない回答に終始した。「世界一になれる絶好のチャンス。参加することは名誉だ」。G大阪については「まとまった好チーム。決勝に向けて重要な一戦になる」。アデレード戦を分析したことを付け加えたが、具体的な明言はなし。遠藤について振られても「彼はスター選手。たくみなポジションでいいプレーをしていた」と型通りのコメントだった。

 そして同日夜、川崎市内での練習は完全非公開で行った。報道陣、サポーター約400人が集まったが、チームバスは競技場の入り口に横付けされ、周囲をフェンスで遮断した。バスを乗り降りする際、注目されるC・ロナウド、ルーニーに大声援が飛んだ。本来は明るく陽気な選手たちだが、応じることはなかった。

 駆け引きが当たり前の欧州にあって、ファーガソン監督の情報管理の厳しさは格別だ。練習公開もなければ、出席規則のない会見には出ない。過去のバルセロナ、ミランがメディア公開を連日欠かさなかっただけに、その違いは歴然だ。帯同しているシェフも「食事メニュー?

 それは答えられない」と口をつぐんだ。

 自らを「コーチ」でなく「マネジャー」と称し、ピッチ内外を完全に掌握するファーガソン監督。会見では「このチームを仕切るには選手以上に強い個性が必要」と胸を張った。「赤鬼」と恐れられる男に、妥協はない。【佐藤隆志】