【テヘラン9日】日本代表DF長友佑都(28=インテルミラノ)が、移籍騒動の真相と、W杯優勝への枯れることのない情熱を明かした。6-0で大勝したW杯アジア2次予選アフガニスタン戦から一夜明け、イランから航空機でイタリアに戻った。今夏に複数クラブからオファーを受けたことを認めつつ、世界一に近づくため、残留が決まったインテルミラノでの定位置獲得を誓った。

 深夜1時半、テヘラン南にあるホメイニー国際空港。乗客でごった返す搭乗口に、スーツ姿の長友がいた。インテルミラノで放出候補とされ、欧州主要リーグの夏の移籍市場が閉まった9月1日に日本代表に合流するまで。その移籍騒動の舞台裏を明かした。

 「(イタリア)国内も国外も、ありがたいことに(オファーを)頂きました。でも僕だけの意思では、決められない部分もあった。インテル側の移籍金の問題もありましたから。みんな(両クラブと選手)が納得する移籍でないと、難しい。僕はインテルには感謝しかない。もう5年近くもいるんでね。必要としてもらえるのなら、僕が(インテルで)試合に出て、勝利に貢献したい。でもサッカー選手としてはプレーするのが一番ですから。そこはしっかり(今後も)自分の将来を考えないといけない」

 イタリア国内ではサンプドリアにジェノア。さらにトルコのガラタサライ、プレミアリーグのレスター、スペインのレバンテ…。複数挙がった移籍候補の中に、交渉が最終局面まで進んだクラブがあったという。結局は移籍金で折り合いが付かずに破談した。インテルミラノとの契約は残り1シーズン。今冬、もしくは来夏には、再び退団の可能性が出てくる。移籍先へのこだわりは、あるのか?

 「チャンピオンズリーグ(CL)は出場したいです。CLに出るのは自分の小さい頃からの夢でもある。難しいのは、リーグのレベルは(セリエAより)落ちるけれど、CLに出ているからという、それだけでクラブを選んでしまうこと。なので1番は自分を必要としてくれるクラブ、必要としてくれる監督がいる場所でプレーすることだと思います」

 今月12日に29歳の誕生日を迎える。長友にとって3度目のW杯となる18年ロシア大会への思いも聞いた。

 「アジアで6-0の大差で勝っても『世界との差が縮まっているか?』と言われれば、そうではないと思う。今、イングランドとスイスがやっているのを見たんです。球際の激しさが全く違う。W杯はどの国も必死に守備をして、体を張ってくる。スペースも与えてくれない。日本は常にW杯を想定して、重圧のある高いレベルをどんどん経験しないといけない。とはいえ、アジア予選を戦わないといけないのも事実ですから。世界に追いついているかどうか正直、今の段階では分からないところもある」

 FW本田らとともに「W杯優勝」を公言し続けてきた。だが日本は14年W杯で1次リーグ敗退し、今年1月のアジア杯も8強止まり。インテルミラノで厳しい立場に置かれている長友も、ジレンマを抱えている。

 「(本田)圭佑とは一緒の街に住んでいますから。ミラノでよく食事に行きますし考えは共有できている。(W杯優勝への)思いは変わらないです。お互い、そこのすりあわせはできている。目標を見失うこともない。僕はこれからインテルに帰って、また厳しいレギュラー争いが待っている。そこで自分をどれだけ磨けるか。世界の強豪に近づくために今やれることは、そこに尽きると思います」

 日本を世界一に近づけること。さらに世界一のサイドバックになるという夢。長友には枯れることのない情熱がある。【益子浩一】