野鳥の歌声に囲まれ、温暖な気候と快適な環境で体を休める-。W杯ブラジル大会(6月12日開幕)で日本代表の前線基地となるキャンプ地を、日刊スポーツが一足先に取材した。サンパウロ郊外のイトゥ市にある「スパ・スポーツ・リゾート」。広大な敷地内にある至れり尽くせりの施設が、約1カ月間に及ぶ日本代表の戦いを支える。

 今回のW杯は、コンディションを制した者が戦いを制するといわれている。広大で試合会場で気候も変わるブラジルで、選手の体調管理に最も適しているキャンプ地を日本は選んだ。イトゥ市内にあるスパ・スポーツ・リゾートは、2つの国際規格のサッカーグラウンドを持ち、近代的なフィットネス・ジム、サウナ、室内、屋外のプール、マッサージルームなどを兼ね備えた国内でも最高級のホテルだ。

 14万平方キロの広大な施設は自然に囲まれ、プライバシーもしっかり守られている。そのため、これまでもブラジル1部リーグや、中国リーグのクラブ、U-12ブラジル代表以上の各年代代表のキャンプ地としても使われてきた。W杯出場国のうち、14カ国の代表チームが視察に訪れている人気のキャンプ地だ。

 「ここは自然に恵まれた場所です。日本代表の選手たちとスタッフは、わが家にいる気分で準備に打ち込んでいただけます」と語るのは、ホテルのオーナーで日系人のジョゼ・カルロス・オトナリ氏だ。現在、日本代表が宿泊する新館の工事が、4月30日の完成を目指し、着々と進んでいる。

 その新館は、96室に400人が1度に食事ができるレストラン、バー、500人が入れる宴会場などがあり、すべてが日本代表とその関係者が期間中は使用する。1室約50平方メートルの部屋を選手1人で使うという。日本協会の要請で、各室でNHKの国際放送が見られる。また、選手が部屋でくつろげるように大きな浴槽もついている。

 日本代表の到着予定は6月7日夜。そこからほぼ1カ月ほど滞在することになる。期間中の食事は、代表に同行する日本人シェフが毎日約50人分を担当する。1日6食。朝食、朝のおやつ、昼食、昼のおやつ、夕食と夜食。各選手は1日に約4500キロカロリーを消費するという。

 イトゥ市はサンパウロから102キロ離れており、各試合会場へ向かうカンピーナス市のビラコポス空港からは約47キロの距離にある。日系人が多く、市の日本人会は約200家族。空港への出迎えだけでなく、W杯期間中の6月14日と15日には、市街地で「日本祭り」も予定される。日系人と日本選手団との交流も予定され、日本代表を盛り上げる。イトゥ市日系会のアンドレ前田会長は「日本選手たちがブラジルに遊びにくるのではないことは分かっている。だから、彼らを温かく迎え、励ましてあげたい」と、日本代表の到着を心待ちにしている。(エリック・カステレーロ、エリーザ大塚通信員)

 ◆イトゥ市

 サンパウロ州の都市で人口は約16万人。気候は亜熱帯で、気温は16~22度と温暖。ブラジルの共和党集会が初めて行われた町として歴史的にも有名。同市出身の喜劇俳優の「私の町は何でもでっかい」というジョークが発端となり、7メートルの公衆電話や、通常の3倍以上の信号機などが観光名所となっている。教会も多い。<過去4大会の合宿地>

 ◆98年フランス大会

 岡田監督の求めた2つの条件、(1)ホテルは日本代表で貸し切り(2)市街地から離れ人の出入りが少ない、に適合したフランスの国際的リゾート地エクスレバンのホテルを使用。

 ◆02年日韓大会

 トルシエ監督は、国内5カ所の候補地から、周囲を遮断できる立地条件を最優先にしてホテル葛城北の丸(袋井市)を選択。練習は完全非公開で、露天風呂でくつろげる環境だった。また、1次リーグ3会場の中央に位置することも選んだ理由の1つだった。

 ◆06年ドイツ大会

 ジーコ・ジャパンが合宿に利用していた千葉・成田の雰囲気に近く、1次リーグ3会場にバス移動が可能で、空港も近いボンのホテルを選択。宿舎は貸し切りではなかったが、プール、筋トレ施設が整っており、日本人シェフ帯同が可能だったことも選んだ理由の1つだった。

 ◆10年南アフリカ大会

 ジョージの南アフリカ屈指の5つ星ゴルフリゾート「ファンコートホテル&カントリークラブ・エステート」。東京ドーム130個分(613ヘクタール)の敷地に、ジム、スパ、日本専用ミーティングルームなどが用意され、試合会場へ向かう空港に車で5分という条件で選ばれた。