[ 2014年2月12日9時7分

 紙面から ]ショットを放つ小笠原(中央)。左は苫米地、右は吉田(ゲッティ=共同)<ソチ五輪:カーリング:日本8-3デンマーク>◇女子1次リーグ◇11日

 「カーママ」が、ソチ初勝利をあげた。小笠原歩(35)率いる北海道銀行の日本は、11日の1次リーグ2戦目で格上のデンマークと対戦。第8エンド8-3から相手のギブアップで勝利して、上位進出に残った。セカンド小野寺佳歩(22)がインフルエンザで欠場し、初戦となった同日の韓国戦で7-12と敗れるピンチ。それでも代役セカンド吉田知那美(22)が踏ん張り、抜群のチームワークで1勝1敗に戻した。

 6-3で迎えた第8エンド、スキップ小笠原のラストストーンが相手のストーンをはじき出した。2点を奪って8-3。相手選手たちが日本チームに歩み寄って「ギブアップ」した。ソチでの初勝利に、五輪3度目の小笠原が、船山が、初体験の苫米地、そして重圧の中で代役を果たした吉田が笑顔をはじけさせた。

 世界ランク9位の日本にとって、格上6位のデンマーク。10時間前の韓国戦に敗れて、後がなかった。しかし、選手たちはショックを引きずらなかった。第1エンドで1点を奪うと、第2エンドからは不利な先攻で得点する「スチール」を3連続で決めた。第4エンドまでで5-0とし、そのまま勝ちきった。8年ぶり五輪勝利の小野寺は「1つ勝てて良かった」と、ホッとした表情をみせた。

 チームに衝撃が走ったのは、前日10日夜。セカンド小野寺のインフルエンザ感染が判明した。選手村から隔離された小野寺は陸上8種競技の経験があり、テークアウトと力強いスイープが持ち味。「セカンドが抜けると攻撃やスイープに影響がある」と、小笠原は不安を隠さなかった。リザーブ吉田は、セカンドで公式戦に出場するのは初めて。昨年12月の五輪最終予選(ドイツ)では出番がなく、記録係だった。「練習ではやっていた」と強気に話していたが、緊張はあった。

 韓国戦では小野寺離脱の影響が出た。吉田は緊張からかショット成功率も65%と低かった。しかし、その吉田がデンマーク戦では78%の成功率。「違うポジションだからといって、言い訳はできない。やるしかないと思った」と、22歳は初勝利を振り返った。

 小野寺の強行出場はありえない。順調に回復しても復帰までは5日程度かかる。14日英国戦は微妙、1次リーグ全休もある。さらに、選手村の3人部屋で5日間を一緒に過ごした吉田と苫米地が感染している可能性も0ではない。相手とともにインフル禍の不安とも戦わなければならない。

 それでも、小笠原はめげていない。8年前のデンマーク戦は5-9で敗れ「スキップをやめたい」と涙したが、この日は「そんなこともありましたね」と笑い飛ばしてみせた。8年間でママになり、精神的にも強くなった。地元ロシアとの3戦目を前に「ロシア、ロシアの声援って、ヨシダ、ヨシダに聞こえません?」と言い放った。「カーママ」たちの戦いは、始まったばかりだ。【益田一弘】

 ◆セカンド

 チームの第3、4投を担当。ハウス手前に残された相手のガードストーンをはじき出す役割が回ってくることが多い。そのため強いショットの精度が高い選手に適性がある。スイープも重要な仕事。

 ◆カーリングで欠場者が出た場合の規則

 登録済みの補欠選手を代わりに入れるか、3人でプレーするかを選べる。3人の場合は、最初の2選手が3投ずつを行い、3人目が2投する。3人以下でプレーはできない。試合中にプレー続行が困難になった場合も同様だが、3人で試合を続けた場合は、1度だけならいったん退いた選手が復帰することができる。