<アジア大会:レスリング>◇第10日◇28日◇韓国・仁川

 女子55キロ級で五輪3連覇の吉田沙保里(31=ALSOK)が、薄氷を踏みながらも日本女子では初の大会4連覇を飾った。1回戦でフォール負け寸前の危機を乗り越え、決勝ではモンゴル選手に12-1でテクニカルフォール勝ちした。世界大会15連覇を達成した上旬の世界選手権から2キロ重い階級での出場。短期間の体重増加に苦しみながら、個人戦の連勝記録も188に伸ばした。

 決勝を圧勝で制すると、吉田は日の丸を背負い、4本指を立てて笑顔をみせた。「最後まで緊張しっぱなしだったが、4連覇できてうれしい」。試合は片脚タックルの連発で加点。第2ピリオド1分すぎに高速の両脚タックルを相手の体に打ち込んで、一気に試合を終わらせた。

 勝負の分かれ目は1回戦だった。「終わったと思った」。相手は4月のアジア選手権53キロ級覇者だが、直前の世界選手権に出場せずに準備した鍾雪純(中国)。165センチと一回り大きい相手に開始2分で力ずくで投げを食らった。フォール負け寸前の大ピンチ。ブリッジで必死に逃れたが、個人戦では01年に山本聖子に敗れて以来の「霊長類最強女子」敗退危機だった。

 0-5で迎えた第2ピリオドで反撃。残り1分を切って逆転したが、辛勝の要因は体重だった。今年からの階級区分変更で、五輪階級の53キロ級に転向し、世界選手権は戦った。だが、今大会は非五輪階級の55キロ級を実施。約2週間で調整を強いられ、体調不良で一時51・5キロまで落ちるなど、54キロ弱で今大会に挑んだ。「体重は気にせず思い切ってやりたい」と前を向いたが、軽量級での体重差はわずかでも「強敵」だった。

 同じ韓国の釜山での02年アジア大会で、国際大会での快進撃は始まった。「原点を思い出して」戦った地で、難しい調整にも打ち勝った。「いろいろな課題が見つかった。リオ五輪に向かって練習を頑張りたい」。今度4本指を立てる舞台は、日本選手初の4連覇を狙うリオデジャネイロの地だ。

 ◆アジア大会の連覇

 日本勢では女子個人での4連覇は初。3連覇は、58年東京大会から66年バンコク大会まで競泳女子100メートル背泳ぎを制した田中聡子がおり、吉田は10年広州大会で史上2人目となっていた。男子では陸上ハンマー投げの室伏重信が5連覇している。レスリングでは4連覇は男女通じて初となる。

 ◆吉田の連勝

 08年北京五輪と12年ロンドン五輪の直前に敗れたが、ともに団体戦で体重2キロオーバーの変則試合。個人戦に限れば01年12月の全日本選手権準決勝で山本聖子に敗れて以来負けなしの188連勝。国内外で51大会連続で優勝。