男子200メートルで、12年ロンドン五輪代表の飯塚翔太(24=ミズノ)が、驚異の17歳サニブラウン・ハキーム(城西高)との直接対決を制して復活Vを飾った。追い風1・0メートルだった決勝は20秒38で優勝。リオデジャネイロ五輪派遣設定記録(20秒28)はクリアできなかったものの、昨年続いた故障を乗り越えて年下のライバルに先勝した。

 自ら走る7レーンだけを凝視した。スタートと同時に飯塚は「視界を狭めて視線を1点に絞った」と集中した。藤光が棄権した決勝はサニブラウンとの“一騎打ち”。序盤に先行した4レーンの新星の姿を意識することなく、スピードアップを続けた。コーナーを抜けると直線で一気に前へ。五輪派遣設定記録に0・1秒届かない20秒38でも、驚異の17歳に競り勝てた内容に自ら及第点を出した。

 飯塚 素晴らしいライバルがいて刺激になる。下から追い上げてもらってうれしい。今は全力で走ることができることが幸せです。

 昨年の日本選手権200メートル決勝で右太ももを痛めて世界選手権代表から外れた。「今までの自分と同じではダメ」とフォームを含めてマイナーチェンジを開始。体重は3キロほど絞って80キロをキープしながら筋肉量を増やした。練習中の距離は100メートル、200メートルではなく、あえて190メートルを走ったという。通常10分間という休憩時間も11~12分と緩く設定。「中途半端な数字にすることで気持ちが入った」と、独特の方法で心身を切り替えてきた効果が、レースに表れてきた。

 最激戦区となる男子200メートルの出場枠は最大3枠となる。既に藤光、高瀬が派遣設定記録を突破済みのため、残り1枠をサニブラウンと争う立場だ。勝負は6月の日本選手権(愛知)。「優勝して内定をもらえれば。そこで今年のベストを狙いたい」。飯塚は自ら復活ののろしをあげていた。【藤中栄二】

 ◆男子200メートルの代表争い 枠は最大3。日本陸連の派遣設定記録(世界ランク12位相当)20秒28をクリアしている藤光と高瀬が1歩リード。飯塚とサニブラウンは参加標準記録20秒50を突破しているが、選考上は後れを取る。代表争いは日本選手権(6月、愛知)で決着し、藤光と高瀬は8位以内に入れば、代表に選出。現時点で飯塚とサニブラウンが代表に内定するためには優勝が必要になる。