<陸上:日本選手権>◇初日◇8日◇大阪・長居陸上競技場

 雨の長居で「伏兵」が「トラックの女王」を振り切った。女子1万メートルは吉川美香(27=パナソニック)が31分28秒71で初優勝。A標準(31分45秒00)もクリアして、初の五輪代表を勝ち取った。これまでの自己ベストを30秒近く縮める快走に「五輪はすごく目指していた舞台。大満足です」と興奮気味にまくしたてた。

 序盤から福士と2人で抜け出した。約7000メートルは「あこがれの人」の後ろにピタリ。ラスト1000メートルから大きなストライドでスパートし、ロンドン切符をつかんだ。「福士さんがいいペースで引っ張ってくれて、食らいつくだけ。最後はスピードを生かせる、と幸せに思いました」。1500メートルで日本選手権5連覇した速さを十分発揮した。

 1万メートルは昨年10月に初挑戦してから3度目。今大会も、1度は5000メートルに絞るように所属先の倉林監督に忠告された。「実業団に入った時から1万を走れる選手になりたかった。監督にお願いしました」。きっかけは北京五輪予選を兼ねた08年日本選手権の1万メートル。渋井と赤羽、福士のデッドヒートを見て「そこを走れない自分が悔しかった」と転向を決意した。4年後に主役となった女王は「世界でアジア勢が離されるのを見ると悔しい。身を引き締めます」と真夏の戦いを見ていた。【近間康隆】

 ◆吉川美香(よしかわ・みか)1984年(昭59)9月16日、神奈川・相模原市生まれ。荏田高から03年パナソニック入り。06年から日本選手権1500メートルで5連覇。07年大阪世界選手権1500メートル代表(予選落ち)。1500メートルの自己ベストは日本歴代3位の4分10秒00、5000メートルは15分15秒33。好きな芸能人は桜井和寿(Mr.Children)と俳優瑛太。155センチ、39キロ。