「神話の国」も台風には勝てなかった。13日に行われる予定だった学生3大駅伝の今季開幕戦、出雲大学駅伝が、台風19号の影響による荒天のため中止となった。26回の大会史上初めてで、11月の全日本、1月の箱根を含めた3大駅伝での中止も初めてという“秋の珍事”。「年度3冠」を狙っていた強豪校の指揮官、選手からも残念がる声が漏れた。

 神々が舞い降りる神話の国・出雲。台風18号が接近中の5日に出雲大社で執り行われた、高円宮家の次女典子さまと出雲大社の権宮司千家国麿さんの結婚式では、その時だけ雨がピタリとやんだ。そんな日本屈指のパワースポットも、台風には逆らえなかった。

 台風19号の予想進路、規模などから、前日中の中止決定でも良かった。だが監督会議で「明日(13日)の朝8時の時点で決定する」という主催者側の声に、監督たちの間からは「できる限り遅くしてほしい」という声が上がった。

 少々の悪条件でも開催を待望する声。そこで主催者側は、午前8時に1回目の協議を開始。「この時点では台風は接近しているが、まだ天候は穏やか」(日本学生陸上競技連合・和田正信理事)と判断し大会ホームページ上で「予定通り開催。ただし天候状況で中止も」とアナウンス。だが同9時半ごろから風雨が激しくなり、同10時の2回目の協議で「選手や観客、ボランティアの安全確保が非常に困難で、警察の協力態勢を従来通りに得られるのも難しい」(同)と中止決定に至った。

 「2強」と呼ばれる駒大や東洋大は夏合宿の手応えを測り、新戦力を試すチャンス。スピードが武器の明大、青学大などは総走行距離の短い出雲で優勝を狙い余勢を駆って全日本、箱根へ-。そんな各チームのもくろみは外れた。ただ、お天道様には勝てない。駒大・大八木監督は「3冠を目指していたので寂しいが、天候には勝てません。全日本で4連覇を狙います」、早大・渡辺監督も「選手の安全が第一。次の全日本に向け切り替えます」。命運は神の国・出雲から伊勢に託された。【渡辺佳彦】

 ◆3大駅伝の中止

 史上初めてのこと。箱根駅伝では、第8回大会が大正天皇崩御により例年1月上旬開催を4月に変更したり、戦時下での中断、代替大会開催(歴代大会には含めず)などはあるが、降雪の悪条件でも中止はなかった。

 ◆今大会の取り扱い

 中止になった今大会について和田理事は「第26回大会を開催しようとしたがレースは中止になった」と説明。来年開催は第27回大会とする。また前回大会を踏襲するかなどシード権の取り扱いについては今後、可及的速やかに決めるとした。