安藤、日本フィギュア初ママで五輪目指す
- 日本女子フィギュア史上初となる「母」での五輪出場を目指す安藤
世界の頂点に2度も上り詰めた元世界女王は、いま自分だけの登山ルートで、自分だけの頂上を目指している。今季限りでの引退を決めている安藤美姫(25=新横浜プリンスク)は、日本女子では誰も成し遂げたことがない、母での五輪出場へ戦いを続けている。
衝撃的なニュースが日本中を駆けめぐったのは7月1日だった。テレビ番組で4月に第1子となる女児を出産し、試合に復帰してソチ五輪を目指すと激白した。競技者としては11年10月のジャパンオープン以来リンクを遠ざかっていた。コーチが決まらず、現役引退する可能性もあったが、愛娘の存在が背中を押した。
「フィギュアをやってきて、自慢できるものをやってきた気持ちがある。本当に素晴らしいと伝えられると思う。競技者としてやっていこう。ご理解してくださる方がいるなら、1年応援してほしい」。
娘にも続けてきた競技のすばらしさを伝えたかった。それが、あと1年間頑張る意味を与えてくれた。
険しい道のり
- 3度目の五輪出場をかけて全日本フィギュアに挑む安藤
ソチ五輪最終選考会で、出場が代表への最低条件である全日本選手権へ、未知の戦いが始まった。地方のブロック予選から戦うのはスケート人生初。1次選考会の9月の関東選手権では、優勝はしたが147・30点と低得点に終わった。フリーでは出産による筋力の低下で体力的に苦しみ、スピード感に欠けた。続く2次選考会の東日本選手権ではSPで13位と大きく出遅れ。上位5人が得る全日本選手権出場権に黄色信号がともったが、フリーで巻き返して2位に滑り込んだ。
9月のネーベルホルン杯で復帰後、5試合を戦った。12月6、7日に行われた国際大会ゴールデンスピン(クロアチア)では今季自己最高の176・82点で2位に入った。「五輪に出られるレベルにはない。出たくても簡単に出られる場所じゃない」。そう自覚もしている。ただ、なぜ滑るのかという理由がぶれることはない。誰も通らなかった道だからこそ、険しさは人一倍。己の頂上へ、スケーターとして、母として、戦いは終幕へ向かう。【日刊スポーツ・阿部健吾】
- ◆安藤美姫(あんどう・みき)
- 1987年(昭62)12月18日、名古屋市生まれ。8歳からスケートを始め、中京大中京高に進学。02年ジュニアGPファイナルで女子で史上初の4回転ジャンプに成功し優勝。06年スケートアメリカでGP初優勝。07年世界選手権で日本女子4人目の女王に輝き、11年大会で2度目の優勝。トリノ五輪15位、バンクーバー五輪5位。162センチ、49キロ。
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