12年ロンドン五輪柔道女子57キロ級金メダリストの松本薫(27=ベネシード)が26日、16年リオデジャネイロ五輪を区切りに引退する意向を示した。「いまの役割は今度のオリンピックで終わりだと思っています。20年(東京五輪)の時には、違う役割になっていると感じています」と、独特の言い回しで述べた。

 この日、世界ランキング上位16人で争うマスターズ大会の開催地モロッコから帰国。羽田空港で競技人生の終わりについて口を開いた。その柔道スタイルから「野獣」と呼ばれ、確固たる地位を築いてきた。リオで一線を退くことは「直感ですね。なんか、そういうのが分かったんです」と野性の勘が知らせてきたという。20年には32歳になる。次の役割は「何かで柔道に関わっている。コーチかどうか…。それは自分でも分からない」とした。

 マスターズでは1回戦で敗退した。「調整不足。次はポカしないように」と猛省。10年大会以来2度目の優勝を狙う8月の世界選手権(カザフスタン)へ、急きょもう1試合出場することを検討中で、足技対策などを徹底していく。

 遠征には映画化された「ビリギャル」の原作を持参した。落ちこぼれの女子高生ギャルが慶大合格を目指す物語。「自分も一番最初はビリだった。体が小さくて、勝つ柔道ではなくて、負けない柔道をするしかなかった」と自身と重ね合わせ、感動したという。ロンドンではビリから頂点に立った。物語は続き、最後の舞台と決めたリオまで1年3カ月。再び「合格」の金メダルを首にかけた時、1つの役割が全うされる。【阿部健吾】

 ◆松本薫(まつもと・かおり)1987年(昭62)9月11日、石川県金沢市生まれ。兼六中-金沢学院東高-帝京大。女子57キロ級で12年ロンドン五輪金メダル、13年全日本体重別選手権優勝、14年グランプリ・デュッセルドルフ大会優勝。163センチ。